登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日 |
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ローマ帝国以後の古い研究テーマであり、それ以後今日までいろいろの政治、経済、社会、文化的文脈の中で検討されてきた研究主題である。そのために国や体制や歴史的発展段階によって具体的な意味内容を異にするが、今日的な理念としては、身近な居住地域から広い区域にわたる国家及びその連合体までを含む多元的な地理的拡がりの中で、個人の権利と責任を共有し、かつ自由と平等を尊重しながら、その運営に自律的にかかわっている民主的市民共同体を意味するといってよかろう。したがって市民社会は、その地理的基盤の拡がり、市民の性格と位置づけ及び社会の体制によって一義的に規定されないが、今日主題をめぐる論議の中心となっているのは、地方と中央の両レベルにおける社会の統治と運営への構成員としての市民参加のあり方である。その背景となっているのは、一方で社会的公共的問題に対する人びとのアパシー化やプレジャー志向及び個人主義志向の一般化があり、他方で少子高齢化問題や教育、福祉、環境問題及び地域再生問題など全市民的な取り組みを必要不可欠とする重大かつ喫緊の課題の存在がある。 これらの新しい課題への対応の必要性は、従来の社会における市民参加のモデルとされてきた投票行動による代表の選出や各種委員会による代表の参加を中心とする代表的民主主義では適切に機能せず、結果として官僚や専門家支配に偏る傾向があり、その是正策と同時に、事柄によってはそれに取って代わる市民参画型の取り組みが求められ、かつ市民の側でもそのための問題意識と用意が育まれてきていることによる。 こうした状況の変化の中で市民社会の存続発展を図るために、人々の「アクティブな市民性(active citizenship )」の涵養と政治、経済、社会、教育及び文化などの多元的な領域へ積極的に参加するための「市民能力(civic skills and competencies)」の開発及び行政的公共性のパートナーとしての「新しい市民的公共性」を創造するための市民活動の推進は今日の生涯学習政策の至上命令となっている。 この関連でわが国の生涯学習は、これまで個人主義的及び趣味的学習に偏っており、市民社会の存続発展にかかわる学習は政策的にも実践的にも位置づけが希薄であり、生涯学習の現代的課題の例示にもあげられない程度であったために、この方面の研究は限定され、したがって主題にかかわる概念や定義さえ皆無に近い状況にある。 br> |
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参考文献 ・ 坂口 緑「中間集団が担う生涯学習の公共性」日本生涯教育学会年報第24号、2003. ・ 田中雅文編著『社会を創る市民大学―生涯学習の新たなフロンティア―』玉川大学出版部、2000. ・ 篠原 一『市民の政治学―討議デモクラシーとは何か―』岩波新書、2004. ・Rund Velthuis,Why Should We Have Political Education? LLIE,Vol.VII,No.4,2002. |
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