生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

生涯学習支援システム (しょうがいがくしゅうしえんしすてむ)

support-system for lifelong learning
キーワード : 生涯学習支援システム、生涯学習社会の教育・学習システム、公理系
桑村(野村)佐和子(くわむら(のむら)さわこ)
1.生涯学習支援システム
  
 
 
 
  【定義】
 生涯学習支援システムとは、人々の生涯学習を支援するために、生涯学習関係機関、施設、団体等、あるいはそれらの機能を関連づける仕組みである。生涯学習援助システムともいう。さらに、学習の側のシステムをも取り入れた場合には生涯学習社会の教育・学習システムという。
【説明】
 一般システム理論でいうシステムは、ある性質によって関係づけられたサブシステム(下位システム、構成要素)の集合であり、対象をとらえる観点であるとされている。しかし、情報システムなどといった場合には、実際に何らかの方法で互いに結合された対象の全体を指していることもあり、生涯学習支援システムの場合にも、具体的な生涯学習推進体制等を意味することがある。
 我が国の生涯学習支援システムをトータルシステムとして捉えると、国レベル、都道府県レベル、市町村レベルの各々の生涯学習支援システムをサブシステムとする階層システム(multi-level system)として捉えることができるであろう。従来、それらの階層間には一種の順序関係があると捉えられてきたが、最近はそのような関係が相対的に弱まってきている。例えば、生涯学習審議会答申『社会の変化に対応した今後の社会教育行政の在り方について 』(平成10(1998)年9月)では、都道府県と市町村間を連携関係とする必要性を指摘している。このようなシステムは、階層システムがサブシステムの縦配列から構成されるシステムであるのに対して、サブシステムが横に水平に繋がり異質性を許すネットワーク・システムへと移行していると捉えることもできるであろう。
 なお、ネットワークはシステムの一種であり、サブシステム間が互いに対等な関係で結びついており、さらには他との関係がない孤立点をも含むことがある。ここで言うネットワーク・システムはそのようなネットワークの特徴を持ったシステムである。
 生涯学習関係機関・施設・団体等をサブシステムとする生涯学習支援システムについてみれば、公的機関等と民間機関等の間や、生涯学習関係施設等間では対等な横の関係が捉えられるであろうし、最近ではネットワーク型行政の推進によって生涯学習関係機関間でもそのようなネットワーク・システムの構築が求められている。
 また、生涯学習支援はア.学校教育、イ.社会の中での教育・訓練、ウ.家庭での教育や個人の学習支援に分けられ、それぞれに関わる組織や個人によって行われるが、人々の学習ニーズにより広く応えるためにはそれらの連携・協力、あるいはその機能の融合も必要であることが指摘されている。山本恒夫は、それら支援の重なる部分に、新たな融合的生涯学習支援システムの構築を提唱している。
 生涯学習支援の機能に着目した場合、山本恒夫によると、サブシステムとして1)学習機会等選択支援システム、2)学習機会等提供システム、3)学習成果の評価・認定サービス・システムがあるとされている。また、生涯学習支援システムを入出力システムとして捉え、コントロール機能、フィードバック機能等がサブシステムであると捉えることもできる。その際、必ずしも生涯学習支援主体と機能は1対1対応しておらず、1つの機関、施設、団体等がすべての機能を兼ね備えていたり、1つの機能を複数の機関・施設・団体等で担うことがある。
 
 
 
  参考文献
・山本恒夫『21世紀生涯学習への招待』共同出版、平成13(2001)年
・野村佐和子「生涯学習社会の教育・学習システムにおけるサブシステムレベルの変化の影響」日本生涯教育学会論集23、平成14(2002)年
 
 
 
 
  



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