登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日 |
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【生涯学習支援システムの検討】 人々の生涯学習や生涯学習を取り巻く社会の変化にあわせて、生涯学習支援システムも変化してきている。適切な生涯学習支援のためには、今後の生涯学習支援システムの方向を常に探る必要があるが、そのためには、対象である生涯学習と生涯学習支援の仕組みを捉え、シミュレーションなどによって実証的に検討できる生涯学習支援システム・モデルの提出が必要である。さらには、学習者の学習も捉えられる生涯学習社会の教育・学習システム・モデル(あるいは生涯学習及び生涯学習支援システム・モデル)での検討も必要であろう。 【生涯学習支援システム・モデルの提出】 生涯学習支援システム(生涯学習援助システム、あるいは生涯教育システム。以下、生涯学習支援システムとする。)に関する研究としては、いくつかの事例報告や事例研究がなされている。例えば、生涯学習推進体制の事例を取り上げたものとして佐藤守「秋田県における生涯教育の展開」(日本生涯教育学会年報第1号、昭和55(1980)年)をはじめ多数ある。また、角替弘志「生涯学習の展開とそのシステム化−静岡県における地域学習の構想−」(同年報2号、昭和56(1981)年)では、静岡県の地域学習に焦点をあてながら、静岡県の教育施策における生涯学習支援のシステム化の試みについて検討している。 理論的に生涯学習支援のシステム化を取り上げたものとしては、山本恒夫の生涯教育システム・モデルがある。これは、昭和55(1980)年に提出された、要素としてコントロール機能、フィードバック機能を持つ動的なシステム・モデルである。また、池田秀男は昭和60(1985)年に生涯教育の推進システムを生涯教育が有効・適切に機能するための援助システムであるとし、平成元(1989)年には広島県の学習援助システムの構想を示している。さらに、その後、山本は先のシステム・モデルに修正を重ねてきており、平成17(2005)年には生涯学習センター機構、マルチメディアネットワーク等を取り込み、さらに学習者をも取り込んだ生涯学習及び生涯学習支援ネットワーク・システムモデルを提出している。 これらのシステム・モデルは、生涯学習支援システムの研究及び解説上の便宜を図る「単純化モデル」を提示したことになるが、先述のような検討を行うためには、さらに「理論的モデル」が必要となると考えられる。理論的モデルは科学における理論の定式に先立って論理的説明を行うのに有効で、理論構築を可能としたり、理論構造と密接に結びついていたりするモデルである。特に数式で表された仮定を数学モデルといい、先述したような検討を行うためには、数学モデルを構築することが望ましいであろう。なぜなら、数学モデルには、第1に多くの複雑な要素間の関係を容易に発見することができ、現象が捉えやすくなる、第2に今まで説明できなかった現象についてもモデルを用いることにより説明できるようになること、第3に将来起こるかもしれない現象を予測することができる、第4に一般理論の構築を容易にする、という意義があるからである。しかし、社会的なシステムは必ずしも数学モデルで説明できないことが多いので、最近は定性的モデルも開発されつつある。 br> |
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参考文献 ・『哲学事典』平凡社、昭和45(1971)年 ・近藤次郎『数学モデル 現象の数式化』丸善、昭和51(1976)年 ・近藤次郎『社会科学のための数学入門』東洋経済新報社、昭和48(1973)年 ・山本恒夫「生涯学習及び生涯学習支援の構造転換」日本生涯教育学会年報26号、平成17(2005)年 ・野村佐和子『市町村における生涯学習援助システムの研究』風間書房、平成8(1996)年 |
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