生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

生涯学習支援システム (しょうがいがくしゅうしえんしすてむ)

support-system for lifelong learning
キーワード : 生涯学習支援システム、生涯学習社会の教育・学習システム、公理系
桑村(野村)佐和子(くわむら(のむら)さわこ)
3.生涯学習支援システム理論の構築
  
 
 
 
  【生涯学習支援システムをとらえる視点】
 一般にシステムは構成要素によって、a.物質システム、b.生体システム、c.抽象システム、d.知識システムなどに分けられる。b.生体システムは、さらに人間システム、社会システム、勢力システムに分けられる。生涯学習支援システムは、一般にはb.生体システムの中の社会システム(social system)として捉えられるであろう。社会システムのとらえ方には、哲学的な観点や科学的な観点が考えられるが、先のような検討を行おうとすれば、科学的な観点から検討していく必要がある。例えば、生涯学習支援システムを入出力システムとして捉え、出力関数や状態遷移関数などを明らかにして、シミュレーションを行うことが考えられる。さらに、事象を捉える方法として、従来のクリスプ概念を用いた方法だけでなく、ファジィ理論を用いたファジィシステムアプローチを用いることも検討する必要がある。
【公理系としての生涯学習支援システム理論の構築】
 一般システム理論では、公理系としてシステム理論を構築しようとしており、生涯学習支援システム理論構築にあっても公理系としての理論構築を図ることが考えられる。そのような公理的アプローチを用いる意義は、第1に、一般に、理論は仮説の体系であり、公理的アプローチによるとそのような仮説を正確、厳密に体系づけられると考えられていることがある。現在までにも生涯学習支援システムに関する研究成果が積み重ねられてきており、公理的アプローチによって生涯学習支援システム理論にそれらを取り込むことが可能となるであろう。第2に、公理的アプローチでは生涯学習支援システム理論を一般システム理論のモデルとして構築することになるが、一般システム理論で公理と定理を設定することにより、これまでのシステムに関する研究成果を生涯学習支援システム理論にも取り込んでいくことができることである。そのことにより、生涯学習支援システムでの新たな定理や公理が提出されることが期待される。第3の意義は、そのようにして生涯学習支援システム理論を構築すれば、一般理論のレベルで無矛盾性などの論理的な検討が行われるので、生涯学習支援システム理論構築の際には理論の論理的一貫性よりも、事象による確証ないしは反証に力を入れることができるというメリットがあることにある。
【課題】 
 生涯学習支援システム理論の構築にあっては、1)公理系としての一般システム理論に、他のシステム研究の成果を取り込み、内容を豊かにする、2)一般システム理論のモデルとして生涯学習支援システム理論を構築し、そこでの事象による確証ないしは反証を行う、3)反証された場合や、他の生涯学習支援システム研究の成果を取り込む際にそれまでの生涯学習支援システム理論では取り込めない場合には、一般システム理論を必要に応じて修正する、という1)〜2)の作業が繰り返されることになる。その際、一般システム理論のレベルでの公理や定理の定式化、生涯学習支援システム理論のレベルでの事象との照応の方法の検討、開発、などが絶えず課題となるであろう。また、生涯学習支援システムだけでなく、小項目2で述べたように、学習者の学習システムも取り込んだ生涯学習社会の教育・学習システム(あるいは生涯学習及び生涯学習支援システム)理論の構築も課題となるであろう。
 
 
 
  参考文献
・北原貞輔『システム科学入門』有斐閣、昭和61(1986)年
・高橋真吾「システムを公理の窓から眺める」飯島純一、佐藤亮編『システム知の探究2:変換するシステム』日科技連、平成9(1997)年
・野村佐和子「ファジィ理論による生涯学習援助システムの研究−長野県茅野市の場合−」日本生涯教育学会年報第12号、平成3(1991)年
・野村佐和子「生涯学習社会の教育・学習システム理論構築への公理的アプローチ−関係作用素マトリックスの導入を中心に−」筑波大学教育学系論集第24巻第2号、平成12(2000)年
 
 
 
 
  



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