生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年11月25日
 
 

生涯学習にかかる行財政改革 (しょうがいがくしゅうにかかるぎょうざいせいかいかく)

キーワード : 地方分権一括法、市町村合併、公の施設、指定管理者制度
今野雅裕(こんのまさひろ)
3.自治体と民間事業者との連携
  
 
 
 
  ア.国・地方の財政状況
 国の生涯学習・社会教育関係予算についても、ここ数年、総額の削減、事業内容の見直しが迫られている。文教費総額の社会教育費の割合は、平成8(1996)年では11.7%、13(2001)年度で10.2%、15(2003)年度で9.5%などとなっており、減少傾向にある。内容においても、国からの地方への補助事業は逐次廃止されてきており、地方へ支出は国の事業の委嘱という形に変わりつつある。また、事業推進の中心となるべき、地方公共団体にあっても、引き続く財政状況の悪化の中で、地方財政改革が進むにつれ、生涯学習関連予算が縮減する傾向にある。財政当局からは、不要不急の事業ではないかとして、削減の対象と見なされがちという状況もある。
 地方公共団体の決算状況報告を見ると、社会教育費の項目は、教育費全体の中で、この数年、総額・比率とも逓減している(都道府県・市町村の合計で、13(2001)年度1兆6,197億円9.0%、15(2003)年度1兆4,843億円8.6%、平成16(2004)年度1兆4,020億円8.3%)。国庫補助の縮減と相まって、生涯学習事業のきめ細かな展開に困難な状況が広がっている。
イ.民間教育事業者との連携
 生涯学習行政においては、民間の教育事業者の役割を評価し、公共機関と民間教育事業者との連携推進を積極的に図ってきている。これは、民間教育事業者の活力により、学習者に多様で充実した学習機会を提供するとともに、あわせて、行政の効率化・スリム化をも図ろうと考えられるようになったからである。従来、社会教育行政の場では、民間との連携は十分評価されず、そのためあまり進んでこなかったが、最近は、講座・学級の実施などにおいて多様な形態での連携協力が見られるようになっている。
 しかし、平成17(2005)年度社会教育調査(16年度間実績)では、教育委員会と社会教育関係施設で実施した講座・学級等の事業のうち、民間社会教育事業者に委託して行ったものは全体の3.0%(営利事業者1.3%、非営利事業者1.7%)に過ぎない。民間活力の導入・拡大は、なお、今後の課題となっている。
ウ.指定管理者制度の導入
 平成15(2003)年の地方自治法の改正により、地方公共団体は、条例の定めるところにより、地方公共団体が指定する者に、公の施設(公民館・博物館・図書館など)の管理の全部または一部を行わせることができるとされた。これまで、公の施設の運営を委託する場合は、当該公共団体が2分の1以上の出資を行う法人等に限られていたものを、施設の効果的・効率的運営を図るために、株式会社等の民間営利事業者を含めて、議会の議決を受けて指定することができるようになった。
 また、法改正時点で管理委託をしていた機関については、平成18(2006)年9月までに、直営か指定管理者制度への移行かを決めなければならないとされた。これによって、生涯学習関係機関の指定管理者への運営委託が全国的に検討・実施されている。
 なお、社会教育法では、公民館等に館長を必ず置くこと、教育委員会が館長・職員を任命すべきことの規定があり、指定管理者制度の導入に伴って、今後、この点での法律上の調整が必要になっている。
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
  



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