生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年11月25日
 
 

生涯学習にかかる行財政改革 (しょうがいがくしゅうにかかるぎょうざいせいかいかく)

キーワード : 地方分権一括法、市町村合併、公の施設、指定管理者制度
今野雅裕(こんのまさひろ)
2.行政の役割・体制の見直し
 
 
 
 
  ア.国の役割の見直し
 地方分権一括法は、国と地方公共団体との対等・協力の新しい関係を築くため、それらの役割を明確にした。国の役割を、国家の存立にかかわる事務、全国的に統一して定めることが必要な事務、全国的な規模あるいは全国的な視点に立って行われるべき施策・事業の実施を重点的に担うこととした。
 平成14(2002)年の地方分権改革推進委員会中間報告では、生涯学習、社会教育分野は、地域の個性が現れるべき分野であって、国は極力関与すべきではないとの考えから、国は国の施設の運営・管理や調査研究、情報提供等に役割を特化すべきであり、地方公共団体や民間への支援を通じた国の関与はすべて見直し対象とし、順次縮減していくべきものとした。さらに、こうした考えのもと、国の行う事業を、時代の変化に対応した先導的取組みや全国的な取組みが求められる施策を重点的に支援するものに限定すべきともしている。生涯学習行政に関する国の役割を限定し、極力、生涯学習事業の推進は地方の事業実施などにゆだねるという方向が打ち出されている。
 平成12(2000)年の行政改革大綱では、国から委託等を受けて行っている検査・認定資格付与の事業については、官民の役割分担・規制改革の観点から厳しく見直し、廃止などの措置を講ずることとされていた。検討の後、平成17(2005)年度末に、文部科学大臣認定の技能審査制度(実用英語検定、漢字検定など)が廃止された。 
イ.地方公共団体の再編
 地方公共団体では、現在、平成の大合併と呼ばれる全国的な市町村合併が行われている。約3,300と言われた市町村が、平成18(2006)年4月には1,820までになった。合併により生涯学習・社会教育行政にも影響が出ている。合併にあっては、しばしば、予算配分、事業実施、人員配置の基準など行政水準の面で、条件の低い方に統合されがちであるなど、懸念されることが少なくない。しかし逆に、合併により、新たなコミュニティづくりが課題となり、生涯学習行政の役割が期待されるようになるなどの面もある。合併を契機に、行政体制の合理化、新事業の展開など、効率的でダイナミックな行政展開が臨まれる。
ウ.生涯学習関係行政の一般部局移行の動き
 地方分権改革推進会議からは、「生涯学習・社会教育行政の一元化…の観点から、地方公共団体がこれらの担当部局を自由に選択・調整できるようにすることが必要」とされ、生涯学習・社会行政を首長部局で一括執行することの有効性が提案されている。また、教育全般に関して、積極的に関与・支援することを表明する首長が増えてきてもいる。これまでも、女性や高齢者の一部事務を、首長部局で統合的に実施することはあったが、最近、島根県出雲市のように、市長部局文化企画部に教育委員会から生涯学習や文化・スポーツの事務を一括して移管(事務委任)、実施するところも出てきている。生涯学習行政は、本来、統合的な理念をもとにしており、必ずしも教育委員会所管でなければならないというものではないが、教育委員会が果たしてきた役割・蓄積は大きく、十分な検討が求められる。
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
 



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