登録/更新年月日:2009(平成21)年4月8日 |
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青少年のボランティア活動を推進するうえで、最大の課題は、相対立する関係にある「自発性・自主性」と「指示・命令」をどの折り合いをつけるかである。 昭和26・1951年の学習指導要領一般編(試案)に、奉仕ということばが登載された。その後、学習指導要領は一貫して、奉仕ないし社会的奉仕という言葉を用いてきた。指示や命令を伴う学校教育界が、自発性や自由性が尊重される、ボランティアという言葉を回避してきたことはひとつの見識と思われる。 しかし、平成10(1998)年に改訂(平成12(2000)年施行)された学習指導要領には、「総合的な学習の時間」においてボランティア活動を積極的に取り入れるよう配慮することが、特別活動/学校行事の「勤労生産・奉仕的行事」においてボランティア活動など社会奉仕の精神を涵養するような活動を行うことが、それぞれ明記された。 さらに平成13(2001)年には、学校教育法と社会教育法の一部改正が行われた。学校教育法(第31条、 49条と62条に準用規定)には、小中学校等の目標の達成に資するよう「特にボランティア活動など(略)の充実に努める」ことが、社会教育法(第5条)では、教育委員会の事務として、青少年のボランティア活動に関する事業の実施とそれを奨励することが、それぞれ付加された。青少年のボランティア活動が法的根拠を得たことは、ボランティア観の啓発・普及とその活動の活発化などに大きな活路が開かれた一方、教育あるいは行政指導の美名のもと、ボランティア活動に対する指示や命令等の作用を常態化させる危惧をも内包させることとなった。 青少年は成人ではなく、成長期にあり未完成であることなどに起因して、大人の庇護下に置かれる。このため、青少年期の教育には、学校教育と同じように、自発性や自主性を出発点とする社会教育においてすら、指示や命令等が伴う。このことは青少年期の教育の宿命的なものと思われるが、ボランタリーなこころや真のボランティア活動の芽を摘むことになったり、さらにはボランティア(活動)嫌いの青少年を育む土壌ともなりかねない。したがって、青少年期の社会教育においては、社会参加・社会体験・社会貢献活動ということばを優先して用い、ボランティア活動ということばを限定的に用いることが望ましいと考えられる。その理由は、社会参加活動・社会体験活動の場合、他者からの指示・命令等を拒否しないからである。 当然、社会参加・社会体験・社会貢献活動においても自発性や自主性が尊重されるべきであることはいうまでもない。加えて、青少年の自発的なボランティア活動の広がりが期待されている。しかし、その自発性や自主性はけっして天与のものではなく、友だちや、親、先生、地域の大人たちからの激励、賞賛、後姿などに触発され、さらに自らの経験や意思等が加わって醸成される。その意味で、さまざまな世代や考え方の異なる人との交わりを必要とする社会参加・社会体験・社会貢献活動は、青少年の自発性や自主性を伸張させる契機となる。 したがって、「自発性・自主性」と「指示・命令」の矛盾を解消するためには、青少年期における社会参加・社会体験・社会貢献活動が、青少年のボランタリィな心を育むものであること、将来のボランティア活動のための準備ないし事前活動に位置づくものであること、などが理解され認識される必要がある。 br> |
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参考文献 |
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