生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2010(平成22)年12月1日
 
 

高校のボランティア活動支援体制 (こうこうのぼらんてぃあかつどうしえんたいせい)

キーワード : 高校生、部活動、生徒会、振り返り、社会教育施設
林幸克(はやしゆきよし)
3.今後の支援体制の在り方
  
 
 
 
  1)学校内の相談体制の充実化
 学校内におけるボランティア活動に関する相談・情報提供窓口に着目すると、担当機関・組織がある学校が3割弱、担当者がいる学校が約2割であった。見方を変えれば、高校生がボランティア活動をしたいという思いになった時に、それに適切に対応することが可能な体制になっていない、すなわち顕在的なボランティア活動希望者のニーズに応えることができていないのである。そうした状況下で、学校外のボランティア活動を単位「認定している」学校に関しては、組織・機関は6割近く、担当者は3割以上おり、「認定していない」学校より体制が整備されている。教育課程外で生徒が自主的・自発的に取り組むボランティア活動を「単位認定」する仕組みが整っている学校は、学内的にもボランティア活動推進に理解があり、窓口も確立している。こうした窓口があることは、学校内外、教育課程内外のボランティア活動をつなぎ、活性化につなげる相乗効果をもたらす。具体的な組織・機関や人物に着目すると、部活動関連が多い。特にボランティア活動関連の部・クラブがある場合は、そこが相談窓口の役割を担っており、それらがない場合には生徒会がそれを担っている。教育課程外の課外活動としての位置づけである部活動が相談・情報提供の役割を果たしているということは、学校外の活動に目が向く傾向にある。その証左に、主な役割として「情報提供」「外部機関との連絡・調整」「とりまとめ」が上位に挙がっており、学校内で完結する活動ではなく、地域社会とつながる活動が想定されている。
2)振り返りとしての活動記録作成
 活動記録は、その活動実績を記録として留めることはもちろん、継続的に蓄積していくことで学校や生徒会、部・クラブの歴史ともなる。生徒個人の視点で捉えても、記録を蓄積すれば、活動を振り返り、発展的な活動へのヒントを読み取ることができる。また、ポートフォリオとして成長の足跡をたどることも可能である。高等学校学習指導要領(2009年告示)においても振り返りに関して、「体験活動を通して気付いたことなどを振り返り、まとめたり、発表し合ったりするなどの活動を充実するよう工夫すること」という記述があり、その重要性が指摘されている。そうした観点から現状を鑑みると、ボランティア活動の内容や時間を記入する様式がある学校が2割弱に留まっていること、活動報告書を作成していない学校が6割近くあることは憂うべき事態である。
3)活動の場の再考
 「高齢者施設」「障害者施設」「保育所」「幼稚園」「特別支援学校」といった、いわば日常生活で関わり合うことの少ない異質な他者との出会いがある場が活動の場となっている。そうした体験自体は意義のあることであるが、それだけに終始してしまうと、活動に対して特別なものというイメージを与えかねない。教師のボランティア観の再考が必要となるが、より身近で、気軽に取り組むことができる内容や場があるという認識を促すことが求められる。「図書館」「公民館」「博物館」「青少年施設」等の社会教育施設が活動の場となっている割合は比較的少ない状況であるが、これらの施設での活動が広く定着することが、高校生のボランティア活動の裾野を広げる一助になる。
 
 
 
  参考文献
・林幸克「高等学校におけるボランティア活動の現状−地域差に着目した報告−」独立行政法人国立青少年教育振興機構研究紀要、第10号、2010
・長沼豊『実践に役立つボランティア学習の基礎理論』大学図書出版、2010
 
 
 
 
  



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