生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2016(平成28)年1月1日
 
 

子育て支援人材の育成と地域づくり (こそだてしえんじんざいのいくせいとちいきづくり)

キーワード : 少子化、家庭の教育力、養育の社会化、地域の教育力、子育て支援
大島まな(おおしままな)
2.子育て支援策と求められる人材
 
 
 
 
   子育て支援策には、子育ての環境整備・条件整備と教育的支援とがある。教育的支援には、子育てをしている親(保護者)に対する支援と、子どもの発達支援がある。従って、親の支援に関わる人材と子どもの発達支援に関わる人材が求められている。
【子育て環境・条件の整備】
 子育ては生活に関わるあらゆる分野の支援が長期にわたって必要な複合的な課題である。
 具体的には、
a.経済的支援(児童手当や医療費・教育費減免など)
b.保健・医療サービスの充実(妊婦検診、乳幼児健診など)
c.保育サービスの充実(保育所・放課後児童クラブの拡充、病児保育、夜間・休日保育、家庭的保育等のきめ細かい対応など)
d.子育てしやすい住環境の整備やまちづくり(防犯対策などの安全・安心なまちづくりや道路・公園等の整備、オムツ替えができるトイレの設置など)
e.企業風土や働き方の見直し(仕事と生活の調和を実現するワーク・ライフ・バランスの推進など)
f.地域の子育て・教育環境の整備(子育てサロン、相談事業、放課後子供教室など)
のように、多分野が関わり連携して取り組まなければ対処できない課題である。
【保護者を支える家庭教育支援】
 教育基本法第10条(家庭教育)では、「父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有する」と明記し、その役割は「生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努める」としている。しかしながら親だけでは困難な状況があることから、第2項で「国および地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない」として、社会全体で子育てを支援することを示し、そのためには「学校、家庭及び地域住民その他の関係者」が連携・協力に努めるものとしている。
 そこで、教育行政が福祉行政等と連携しながら多様な状況にある親をきめ細かに支援しようと、「すべての親を対象とする家庭教育支援」に取り組んでいる。主な取り組みは、
a.家庭教育支援チームを中心とした体制づくり・ネットワークづくり
b.家庭訪問等のアウトリーチによる個別対応
c.多様な場を活用した学習・交流機会および情報の提供
d.子育てサポーター・リーダーの養成
e.家庭教育手帳などの啓発資料の配布・配信と情報誌による情報提供
f.地域SNSなどITを活用した支援
g.「早寝早起き朝ごはん」運動(生活習慣づくり)の推進
h.電話・メール相談、来室・訪問相談など相談体制の整備
i.親の自主的な学習の支援
などである。
【子どもの発達支援】
 親に代わって、あるいは家庭教育を補完すべく、子どもたちの成長・発達を促す活動を行う支援である。子どもが過ごす場は、福祉行政による保育所や放課後児童クラブなどに加えて、幼稚園・小学校などの教育施設も子育て支援の拠点施設としての役割を期待されている。社会教育では、放課後子供教室や土曜教室、通学合宿などを実施してきた。学校教育との連携で長期集団宿泊体験も行っている。スポーツ・文化に関する青少年関係団体も活動している。すべての子どもに「生きる力」を育むために、地域の教育力が期待されている。さまざまな場で年齢や発達段階に応じて成長を支援し自立を促すプログラムを実施することが求められている。
 
 
 
  参考文献
・大島まな「子育て支援を核とした人材育成と地域づくり−『養育の社会化』時代の『地域の教育力』を問う−」日本生涯教育学会年報第35号、2014年
 
 
 
 
 



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