生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2008(平成20)年11月10日
 
 

北欧の生涯学習支援 (ほくおうのしょうがいがくしゅうしえん)

lifelong learning support in Nordic Countries
キーワード : 北欧モデル、グルントヴィ、民衆成人教育、民衆高等学校(フォークハイスクール)、スタディー・サークル
澤野由紀子(さわのゆきこ)
3.北欧における生涯学習のネットワーク
  
 
 
 
   北欧では、コペンハーゲンを本部とする北欧閣僚理事会(Nordic Council of Ministers、1971年創設)を通じて、成人教育に関する情報交換や交流活動が行われてきた。
 北欧閣僚理事会には成人教育運営委員会(略称SVL)が設けられており、北欧地域の成人教育ネットワーク作りとさらなる発展のための改革を支援している。具体的には、NORDPLUS VOXENと呼ばれる事業のなかで、北欧諸国の成人教育団体等が組織する国際的協力事業、講座、会議等に対する助成、成人教育に関するセミナーの開催、ニューズレターの発行による情報交換のほか、訪問調査及び教員交流を通じたネットワーク作り等を行っている。
 北欧閣僚理事会は1992年12月に北欧の成人教育の専門家を構成員とするシンクタンクを創設した。このシンクタンクは、1995年2月に『草原のなかの黄金の富−−万人のための生涯学習』という報告書を発表し、経済の国際的競争力を高めつつも伝統のなかで培われてきた北欧の社会的価値観を守り発展させるために、民衆成人教育を中心とする北欧型の生涯学習が今後ますます重要になっていくという見解を示した。EUの生涯学習年にあわせて1996年11月7〜8日にはコペンハーゲンで「生涯学習−−理念から現実へ」をテーマとする会議を開催し、北欧だけでなく、EU諸国やバルト三国・ロシアからも代表を招いて、EUではとかく労働生活との関連のみで論議される傾向のある生涯学習について、人間形成の面をより重視する北欧のfolkeopplysningの理念の重要性についての理解を広めた。
 北欧各国では、1990年代後半に、『草原のなかの黄金の富』において提案された、1)生涯学習推進のための開発事業、2)成人教育・学習の国際化、3)成人教育教員・指導者の研修、4)新テクノロジーとメディアに対応した教育内容・方法の開発、5)万人のための生涯学習に関する情報交換、及び6)共同研究の推進という6項目の「行動計画」を参考に、それぞれの生涯学習支援の方針が定められ、教育改革が行われた。
 北欧閣僚理事会は、成人教育の分野における北欧諸国の協力関係とバルト三国、ロシア北西部ならびに他の欧州諸国との交流を促進するため、2005年に北欧成人教育ネットワーク(略称NVL)を設立した。NVLの本部は、スウェーデンのフレクシブル学習庁に置かれている。NVLは、次の4点を課題としている。1)多様な学習領域における生涯学習とコンピテンスの構築、成人のコンピテンスの認定、2)多様な成人の学習部門における学習のプロセスと成果に焦点をあて、成人学習への投資効果を測ることにより、質を保障し、そのための質的指標を開発すること、3)労働生活と市民社会における競争力の向上のために部門を超えた協力を行うこと、4)成人教育の指導者の研修ならびに成人教育方法論の開発を通して、人格の発達、民主主義的市民社会の発展のための部門を超えた協力を行うこと。
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
  



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