生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年7月19日
 
 

リカレント教育 (りかれんときょういく)

recurrent education
キーワード : OECD、教育休暇
岸本睦久(きしもとむつひさ)
3.リカレント教育に関する近年の推移と事例
  
 
 
 
  1) 推移
 リカレント教育が構想された1960年代末と今日の状況を比較すると、いくつかの点が注目される。まず、教育期、労働期、隠退期という基本的なライフサイクルに変化はなく、今日においてもほとんどの人々に共通して見られるということである。一方で、人口構成等の面では、高齢者人口の増大や女性の社会進出という変化もみられる。
 社会経済においては、グローバル経済の進展や科学技術の発展を背景として各国で教育政策の重要性が増大した。特に、インターネットを中心とする情報技術の進歩により、知識の量が社会や経済の発展の基礎となる知識基盤型社会が出現したことで、人々は、より高度の知識・技能を身につけることが求められるようになった。
 変わらないライフサイクル、就労人口や人口構成の変化、国際的な経済競争の激化、知識基盤型社会の出現など、21世紀初頭の先進諸国を中心にみられるこうした特徴は、リカレント教育に関する取組にも影響を及ぼしている。第一に、成人教育に対する需要、特に、労働に関連した教育の重要性が増大している。第二に、知識や技能について従来以上の頻繁な更新が求められている。さらに、eラーニング゙など技術革新を背景とした新たな学習形態の普及は、リカレント教育のあり方を多様なものとしつつある。
2) 事例
 リカレント教育は、個人が教育と労働を中心とする教育以外の諸活動を交互に行えるように、教育制度はもとより、労働政策を中心とする関連諸施策並びに企業の雇用慣行等を再編することを目指す戦略である。したがって、一つの取組を採り上げてリカレント教育全体を示す事例とすることはできないが、国内外にはこの戦略に密接に関連した様々な取組が見られる。
 例えば、リカレント教育を最初に提唱したスウェーデンでは、中等教育修了資格を有しない者であっても25歳以上で4年以上の就労経験があれば大学入学を認める制度(25:4ルール)を導入している。アメリカ合衆国では入学者選抜を行わないコミュニティ・カレッジが、多くの成人学生を対象に様々な高等教育プログラムを提供している。また、韓国の単位銀行制度は、職業経験や複数の教育機関における学習経験を単位として累積し、一定量の単位を取得した者に学位を授与している。
 我が国においても、例えば、初等中等教育においては、単位制高等学校や自宅以外での学修成果の単位認定などの取組が見られる。高等教育においては、社会人特別選抜や夜間部・昼夜開講制、通信教育や公開講座、専門職大学院の創設、サテライト・キャンパスの設置など、大学による様々な取組が行われている。また、独立行政法人大学評価・学位授与機構による学位授与事業や、放送大学の提供する教育プログラムはリカレント教育の推進に重要な役割を果たしている。さらに、専修学校について社会人等を対象としたキャリアアップ゚のためのモデル・プログラムの開発・導入が進められているほか、国家資格取得の際の受験資格における学歴要件の変更のような義務教育後の学習成果に対する評価の見直しも行われている。また、文部科学省等関係4府省が策定した若年失業者対策「若者自立・挑戦プラン」の中で平成16年から実施されている「フリーター再教育プラン」や「キャリア高度化プラン」などもリカレント教育に関する取組のひとつといえる。
 
 
 
  参考文献
・文部科学省『平成16年度文部科学白書 「生きる力」を支える心と体』国立印刷局、平成16年。
・Torsten Husén, T. Neville Postlethwaite (Editor-in-Chief), The International Encyclopedia of Education (2nd Edition), Pergamon, 1994, pp.4957-4964.
 
 
 
 
  



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