登録/更新年月日:2009(平成21)年12月30日 |
|||||||||||||
|
|||||||||||||
|
|||||||||||||
5年ごとに実施される「社会生活基本調査」の結果を見ると、ボランティア活動の行動者率はここ20年間ほど、25%から29%の間を安定的に推移している。しかし活動への関与のあり方は人によって異なり、当人が置かれている環境や、有している資源・ネットワークによって、活動への誘因は大きく変化する。 ボランティア活動に対して適切な支援を行うためには、活動への参加の規定要因を明らかにすることが求められる。 ボランティア活動への参加の規定要因に関しては大きく分けて2つのアプローチがある。 1つは、ボランティア活動を、政治参加の一形態として捉え、政治的な感覚やネットワーク、所属団体などから参加の要因を明らかにしようとするアプローチである。 このような分析の先鞭をつけた蒲島(1988)は、政治参加の一形態として地域・住民運動を取り上げ、学歴や年齢、都市規模などが参加に与える効果を明らかにした。 その後、ボランティア活動と他の政治参加との関連をパス解析や共分散構造分析を用いて示した研究、「投票外参加」としてボランティア活動を含む政治参加の規定要因を参加経験や所属団体などから明らかにした研究、政治意識や政治関心との関連を追究した研究、ネットワークの「同質性」や「異質性」といった「社会関係資本(Social Capital)」が持つ効果を明らかにした研究がなされてきた。 これらの研究の背景には政治参加に関して用いられてきた諸理論、具体的には、集合行動論や資源動員論、合理的選択理論、市民文化論、社会関係資本論などの理論があり、これらの理論を援用する形で、ボランティア活動に対する分析が進められてきた 。 福元(2002)の整理によれば、集合行動論では(a)「主観的な動機」が参加を促すと考えられ、社会への不満や怒りが参加を促すとされる。一方、資源動員論においては、参加を促すのは(b)「客観的な資源」であるとされる。この資源には、(1)資金、(2)時間あるいは労力、(3)市民的技術が含まれる。 合理的選択理論においては、(c)「参加するコストと参加で得られる便益」を比較考量した上で便益が上回る場合に参加が行われると説明される。しかし、実際には必ずしも便益がコストを上回らなくても参加がなされる場合がある。これは市民文化論によれば、「市民的満足感」や「政治的有力感」などの(d)「政治意識」の存在によって説明され、市民としての責任を果たすことが重視される文化のもとでは参加がより促されるとされる。 近年では、人間関係のネットワークや共有化された規範、一般的な信頼が参加を促すという(e)「社会関係資本」の理論も注目されている。 このように参加の要因を説明する理論は多様であり、相互の仮説の間には重なり合う部分と矛盾する部分が存在する。 実際にはこれらの仮説はいずれか1つが正しいと言うものではなく、それぞれの仮説が参加の規定要因の一部に焦点を当てたもので、重層的に参加を規定する関係になっていると捉えることが妥当である(荻野2009)。 以上のボランティア活動への参加と政治参加を同型に捉えるアプローチにおいては、両者の規定要因が共通であることが前提とされている。そのため、ボランティア活動独自の規定要因を明らかにするためには異なるアプローチが求められる。 br> |
|||||||||||||
|
|||||||||||||
参考文献 ・福元健太郎(2002)「参加」福田有広・谷口将紀編『デモクラシーの政治学』東京大学出版会, 2002, pp.234-250. ・蒲島郁夫(1988)『政治参加』東京大学出版会. ・荻野亮吾(2009)「ボランティア活動の規定要因についての計量分析:「参加」の観点からのJGSSデータの分析」『日本生涯教育学会論集』第30号, pp.63-72. |
|||||||||||||
『生涯学習研究e事典』の使用にあたっては、必ず使用許諾条件をご参照ください。 |
|||||||||||||
Copyright(c)2005,日本生涯教育学会.Allrights reserved. |