登録/更新年月日:2009(平成21)年12月30日 |
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ボランティア活動への参加についてのもう1つのアプローチは、参加の要因を現実生活との関係から明らかにしようとするものである。 このアプローチは、(A)「外面的特性」に関するもの、(B)「内面的特性」に関するもの、(C)「生活構造」と関連するもの、の3つに分けられる。 (A)例えば本人の属性に関しては、性別、年齢、配偶者の有無、就業の有無、就労形態、居住地域、学歴、子どもの有無などがどのような影響を持つかが注目されてきた。 (1)性別については、社会的活動への参加及び参加のタイプは男女で一定程度異なること(OECD2001:47)が指摘されている。ただし、男女の規定構造の違いは実証的に明らかにされていない。 (2)年齢については、若年層よりも年齢が高い層の方が参加が高まるとされる。ただし、これが世代効果か、時代効果か、それとも学歴を含めた教育・学習の効果によるものなのかは明らかとなっていない。 (3)配偶者については、夫婦のボランティア活動に関連性や相関があること、配偶者がいる場合、活動への参加が促進されることが明らかにされている。 (4)就労形態については、労働時間と活動参加との関連性が見られないことが指摘される一方で、就労上の地位の安定度はボランティア活動への参加を促すとされる。 (5)居住地域については、地方部に居住する方が都市部に居住するよりも活動への参加が促されるとされる。 (6)学歴の効果については見解が分かれている。これは、世代による学歴の持つ効果の違いや、活動内容による参加者の層の違いなどによるものである。加えて学歴以外の教育や学習の効果、例えば読書冊数や講座・学級の受講経験の影響についても分析が進められている。 (7)子どもの有無については、子どもがいる方が、地域や学校との結びつきが強まり、参加が高まることが知られている。 (B)このような本人属性に関わる要因を「外面的特性」に関わるものとすれば、参加を動機づける「内面的特性」に注目するアプローチも存在する。このような動機として、利他的・公共的な意識、活動の楽しさ、学習の成果の活用や自己実現への志向性などが挙げられる。これらの動機の構造は複雑であり、その規定のあり方は人によって大きく異なる。 (C)それ以外に生活時間、家計変数、生活満足度などの各人の「生活構造」の持つ効果、つまり日常生活とボランティア活動の関係も注目されている。 生活時間は、「時間」が絶対量が定まっており、その配分が重要になる資源であることから(矢野1995)、ボランティア活動への参加を規定する1つの要因として注目されている。特に、家事時間や、家族と過ごす時間、各種余暇活動(友人との交流、趣味活動、スポーツなど)の時間との関連が明らかにされつつある。 家計変数については、経済的なゆとりがボランティア活動への参加を高めるという仮説に関心が持たれてきた。ただし、本人の年収や賃金率が規定要因であるかは疑わしく、世帯収入の効果が大きいとされる。 生活満足度については、満足度が高い方が参加が高まることが立証されている。 ボランティア活動の内容や種類によって、これらの要因の持つ効果も異なる。様々なボランティア活動を同質的に捉えるのではなく、それぞれの規定要因を明らかにすることによって、より適切な支援の方法が明らかにされることになる。 br> |
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参考文献 ・中島隆信・中野諭・今田俊輔(2004)「わが国のボランティア活動:『社会生活基本調査』の個票データによる観察結果」PRI Discussion Paper Series No.04A-24, 財務省財務総合政策研究所. ・OECD(2001)The Well-being of Nations:The Role of Human and Social Capital. ・矢野眞和(1995)『生活時間の社会学:社会の時間・個人の時間』東京大学出版会. |
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