生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

イギリスの職業資格制度 (いぎりすのしょくぎょうしかくせいど)

sysytem of vocational qualifications in England and Wales
キーワード : 徒弟制、全国職業資格協議会、全国職業資格、全国資格枠組み、資格カリキュラム機関
松永由弥子(まつながゆみこ)
3.イギリスの職業資格制度の動向と課題
  
 
 
 
  1) アカデミックな資格との統合の試み
 NVQの推進においては、混沌とする職業資格の整理・統合により、職業資格を学位や学校教育修了を認定する資格などのいわゆるアカデミックな資格と同等のものと位置づけたいというねらいがあった。特に一般教育資格・上級試験(General Certificate of Education A-level,通称GCE A-level)は「黄金のスタンダード(gold standard)」と呼ばれるほど価値が高いものとされ、アカデミックな資格は職業資格に優越するという観念が一般的であった。
 1992年、前年の教育科学省・雇用省・ウェールズ省共同白書『21世紀に向けての教育と訓練(Education and Training for the 21st Century)』の趣旨にそって職業資格とアカデミックな資格の橋渡し的役割となる一般全国職業資格(General National Vocational Qualification,GNVQ)が導入された。就職にむけての基礎資格であると同時に高等教育機関への入学資格を兼ねたGNVQは、学習者には受け入れられやすかったが、このこと自体を問題視する見方もあり、2006年までに廃止されることとなった。
2)全国資格枠組み(National Qualification Framework)の成立と関連する動向
 1996年の『デアリング報告:16歳から19歳までの資格の検討』の刊行以降、1986年ごろから用いられていた職業資格とアカデミックな資格の対応表のような形の「全国資格枠組み(National Qualification Framework,NQF)」が政策上も重視され、GNVQの存在の有無に関わらず、両資格を同価値とみなしその全国的水準を示そうとする動きは現在まで変わっていない。NQFは、当初は、5つの水準を枠組みとして資格を分類していたが、2004年には高等教育資格との関連も明確に示した9つの水準(entry level から level8まで)に資格を分類している。
 このようにアカデミックな資格も含めた資格全体の整理統合が進む中、資格に関わる組織の再編も進んでいる。省庁は2001年に教育技能省(Department for Education and Skills、DfES)に改組された。「1997年教育法(Education Act,1997)」の規定により職業資格と学力認定資格の企画調整をする全国統一機関の「資格カリキュラム機関(Qualifications and Curriculum Authority,QCA) 」が創られた。NCVQはこのQCAに改組された。普通学力試験機関と職業資格付与試験団体との合併・連合も進み、1996年にはエデクセル財団(BTECと1996年にロンドン大学試験・評価協議会との合併)が、1997年には評価資格同盟(Assessment and Qualifications Alliance,AQA、CGLIと連合試験委員会及び北部試験評価委員会との同盟体)が、1998年にはOCR(RSAとケンブリッジ大学地域試験連合との合併)が誕生した。職業資格は全国統一水準の設定により、質の向上を模索し続けている。
 
 
 
  参考文献
・柳田雅明著『イギリスにおける「資格制度」の研究』多賀出版、平成16(2004)年
・ 秦由美子『変わりゆくイギリスの大学』学文社、平成13(2001)年
・QCA『 GNVQ withdrawal』、QCA、2003年
・ The withdrawal of GNVQs:information for employers, http://www.qca.org.uk/608_12094.html、平成17(2005)10月19日参照



 
 
 
 
  



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