生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

地域(地域社会)の教育力 (ちいき(ちいきしゃかい)のきょういくりょく)

キーワード : 地域(地域社会)、学校、コミュニティ、意味ある他者、子育て支援
久保田力(くぼたちから)
1.地域(地域社会)
  
 
 
 
  1)「地域(地域社会)」とは何か
 それが展開される場を、家庭、学校、社会のいずれに設定しようと、「教育」というわれわれ人間にとって極めて重要な活動に関する議論において「地域(地域社会)」という用語が用いられる時、もちろんそれが意味するところは、「物理空間的な一定の広がり」にはない。
 確かに、自然的環境の豊富さや多様性、あるいは、社会的環境の具体的態様(例えば、農村であるのか工場地帯であるのか住宅街であるのか等)が、人間の心身両面における成長や発達に影響を与え得る事は確かである。
 しかし、基本的に「教育」的活動が「人間対人間のコミュニケーション」を基盤に成立するものである以上、そこで語られる「地域(地域社会)」とはすなわち、一人ひとりにとって「意味ある他者(significant others)」となり得る人間とのコミュニケーション(人間関係)の総称ととらえる事ができる。「地域(地域社会)」という日本語(概念)が英語文化圏での「コミュニティ(community)」とのアナロジーで語られるのは一般的であり、この点からもそれが、物理空間ではなく「人間関係的広がり」を意味するものである事が理解できよう。したがって、家庭や学校での「意味ある他者」たちとの人間関係もある意味において、「地域(地域社会)」という概念に包含され得ると考えるべきである。
2)「地域(地域社会)」が論じられる社会的背景
 われわれの教育的諸活動が展開される典型的場として伝統的に取り上げられてきたのは、家庭、学校、そして、社会である。近年、「地域(地域社会)の教育力」が問われ始めた、あるいは、問い直され始めた基本的社会背景としてあるのは、言うまでもなく、それらの教育的機能の低下に対するわれわれの危機意識(感)にある。
 確かに、学校教育との関連で言えば「落ちこぼれ」「不登校」「いじめ」「暴力的行動の低年齢化や拡大」、成人も含めた世代(社会)全体の病理現象としての「フリーターやニートや『ひきこもり』の増加」「インターネットとの不適切な関わり方」など、われわれの不安や心配を潜在的あるいは顕在的にあおる社会的諸事象は、それこそ枚挙に暇がない。
 だが、別の視点から「地域(地域社会)の教育力」論の背景を指摘できるとすれば、「少子高齢化」「IT(Information Technology)化」「ユビキタス化」「ユニバーサルデザイン化」などの急速、かつ、急激な現代社会および文化の変化に対し、われわれがこれまでに社会の様々な側面において有していた教育的機能が、悲劇的なレベルで追いつかなくなっているという現実がある。このような急速で急激な社会(文化)の変化への対応の遅れを補うために提案されるものの一つが「地域(地域社会)の教育力」概念であり、その回復や強化の必要性である。
3)「地域(地域社会)の教育力」の限界
 現代社会や文化の劇的変化に対応しなければならないのは家庭や学校も同様である。「地域(地域社会)」がそれらの機能や役割を代行するわけではないので注意しておきたい。
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
  



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