生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

生涯学習関係答申の動向と課題−平成17年まで− (しょうがいがくしゅうかんけいとうしんのどうこうとかだい−へいせいじゅうしちねんまで−)

process and problem of reports on lifelong learning
キーワード : 生涯学習審議会、中央教育審議会、地域の教育力、生涯学習社会、社会教育行政
白木賢信(しらきたかのぶ)
3.生涯学習社会実現のための課題
  
 
 
 
   平成15(2003)年に提出された中央審議会答申『新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について』では、教育基本法に新たに盛り込むべき理念として生涯学習も挙げられ、次のように述べられている。
 「時代や社会が大きく変化していく中で、国民の誰もが生涯のいつでも、どこでも、自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が適切に評価されるような社会を実現することが重要であり、このことを踏まえて生涯学習の理念を明確にする。」
 同答申は、教育の基本理念として生涯学習の理念を明確にすることや、家庭教育の支援、社会教育の振興の重要性なども提言しているが、その提言を受けて生涯学習社会を構築していく上での基本的な考え方を示したものが、平成16(2004)年の中央教育審議会生涯学習分科会『今後の生涯学習の振興方策について(審議経過の報告)』である。
 この報告では、生涯学習社会を目指すための基本的な考え方として、
(1)教育・学習に関して、個人の需要と社会の要請のバランスを保つこと
(2)生きがい・教養・人間的つながりなどの人間的価値の追求と職業的知識・技術の習得の調和を図ること
(3)これまでの優れた知識・技術や知恵を継承しつつ、それを生かした新たな創造を目指すこと
の3点を挙げている。
【課題】
 今後このような考え方で生涯学習社会を実現していくためには、次の2点が課題となるであろう。
 その第1は、学習成果の評価の仕組みづくりである。それについては、平成11(1999)年の生涯学習審議会答申『学習の成果を幅広く生かす−生涯学習成果を生かすための方策について−』が、平成3(1991)年の中央教育審議会答申で取り上げられた学習成果の評価の提言を継承発展させて、学習成果の評価や学習成果の活用についてを提言している。具体的には、自らのキャリアを開発し、学習成果を社会的活動、進学、就職、転職、再就職等に広く活用していくために、自らの学習成果を積極的にアピールし、社会的評価を求めることができるように外国のポートフォーリオのような「生涯学習パスポート」(生涯学習記録票)と学習活動の事実確認、証明を行う学習成果の認証システムづくりを提言した。
 第2の課題はIT活用の推進である。上述の中央教育審議会生涯学習分科会『今後の生涯学習の振興方策について(審議経過の報告)』(平成16(2004)年)にあっても、生涯学習振興を図る上で今後重視すべき観点の1つに、「ITの活用」を取り上げているが、そのことは既に平成12(2000)年の生涯学習審議会答申『新しい情報通信技術を活用した生涯学習の推進方策について−情報化で広がる生涯学習の展望−』でも取り上げられている。平成12年の答申は、それ以前の答申で言われてきた情報化への対応に取り組んだもので、新しい情報通信技術を活用した生涯学習施策の基本的方向が述べられ、当面推進すべき施策について提言している。例えば、多様な情報機器を選択して学習することにより、新たに効果的な学習スタイルを開発することができるようになることや、学習者が学習資源を自ら検索し、新たに学習資源となるコンテンツを作成することへの期待が述べられており、地域の情報ネットワークづくりと相まって、生涯学習を推進するヒューマンネットワーク構築の必要性も指摘している。
 
 
 
  参考文献
・生涯学習審議会答申「学習の成果を幅広く生かす−生涯学習成果を生かすための方策について−」H11
・同審議会答申「新しい情報通信技術を活用した生涯学習の推進方策について−情報化で広がる生涯学習の展望−」H12
・中央教育審議会答申「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」H15
・同審議会生涯学習分科会「今後の生涯学習の振興方策について(審議経過の報告)」H16
・同審議会生涯学習分科会議事録、文部科学省、http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo2/index.htm#gijiroku、H17.12.8参照
・井内慶次郎監修、山本恒夫・浅井経子編著『生涯学習[答申]ハンドブック』文憲堂、H16
 
 
 
 
  



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