登録/更新年月日:2006(平成18)年11月4日 |
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【学習機会の概要】 熟年大学の設置主体は全国各地の市町村の福祉部、教育委員会、社会福祉協議会などである。ここでは、広島県東広島市社会福祉協議会が主催する「東広島市熟年大学」への参加者を対象に行った調査(平成13(1999)年)にもとづき高齢者の学習の特色について解説する。 「東広島市熟年大学」は、60歳以上の高齢者の生きがいと社会参加の促進をめざし、趣味・教養、健康維持、社会活動等の多様なプログラムを提供している。講座は年間15回、合計30時間で22コースがある。この講座内容は若干の変更はあるが2006年現在においても大きく変化していない。会場は市内4ヶ所である。参加者の年齢は60歳代と70歳代が約半々である。 【学習参加目的と直接的効用】 参加目的の上位3位は「趣味を豊かに」77%、「健康増進・体力づくり」73%、「親睦を深める・友人を得る」67%である。「健康増進・体力づくり」以外は高い成果が上がっている。このことより、地域における高齢者が学習活動への参加を通して友人関係を構築し、趣味等を通して、心の豊かさを得ることに、成功していると言えよう。 【学習参加による間接的効用】 学習参加による効用は、前述した学習の直接的効用のみではない。調査結果によると、学習参加は高齢者の精神的・身体的諸機能にも強いインパクトを与えていることが明らかになった。すなわち、熟年大学の参加者に対して、「交友関係」「気力」「知力」「社会的関心」「体力」の5項目について「参加の前後にどんな変化があったと思いますか」と質問した結果は以下の通りである。「交友関係」においては、81%の参加者が「拡大・深化・強化した」と答えている。参加目的の「親睦を深める・友人を得る」は67%であったが、参加により「交友関係」が「拡大・深化・強化した」と認識している人の率はそれよりもかなり高い。次に、「気力」では64%以上が、[知力」「社会的関心」では50%以上の人が「拡大・深化・強化した」と答えている。「体力」に関しては、このプログラムの性格にもよるが、36%の人が「拡大・深化・強化した」と答え、39%が「どちらともいえない」である。「拡大・深化・強化しなかった」という人は9%にとどまる。加齢という状況を考慮すると体力を維持できていることがプラス評価である。したがって「どちらともいえない」は良い結果と受け止めると肯定的評価は75%である。 上記調査結果は、熟年大学での学習経験が多面的な効用を持つことを示している。すなわち、高齢期においても、学習への参加が、人々の能力や社会関係等を拡大・強化・向上する力を内在していることを示唆している。 br> |
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参考文献 ・塩谷久子「地域社会における高齢者の生涯学習−学習機会への参加と成果−」『日本生涯教育学会論集』21、2000年、129-136頁。 ・池田秀男「高齢期の生涯学習支援哲学−理論図式の確立を目指して−」『安田女子大学大学院博士課程記念論文集』1997年、81-91頁。 ・池田秀男「生涯学習概念の成長と生涯学習社会の構築」『安田女子大学紀要』第24号、1996年、135-148頁。 |
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