生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2015(平成27)年1月9日
 
 

生涯学習政策のイノベーション (しょうがいがくしゅうのいのべーしょん)

キーワード : イノベーション、ブレイク・スルー、相互作用、スケール・アウト、政策
合田隆史(ごうだたかふみ)
1.イノベーションの意義
  
 
 
 
  【イノベーションとは】
 一般にイノベーションとは,「技術の革新にとどまらず,これまでとは全く違った新たな考え方,仕組みを取り入れて,新たな価値を生み出し,社会的に大きな変化を起こすこと」をいう。
 イノベーションという概念を最初に提唱したのは,オーストリア出身の経済学者シュンペーターだとされているが、シュンペーターは,環境変化に対応して新たな均衡へと向かう「適応」や,循環的ないし漸進的な経済「成長」と,革新的な経済「発展」とを区別し,後者を引き起こす原動力となるのが「新結合の遂行」、すなわちイノベーションであるとする。そして,これには,1)新しい財貨の生産,2)新しい生産方法,3)新しい販路の開拓,4)原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得,5)新しい組織の実現の5つの種類があるとする。
【生涯学習政策のイノベーション】
 このように、イノベーションという概念は、いわゆる科学技術の分野のみならず、広く社会の様々な事象について考えることができる。
 今日、生涯学習の活発化,生涯学習支援体制の整備は,長寿化・グローバル化と人々の孤立の進行,そして「希望格差」の基底要因としての「学習格差」の拡大が進む日本にとって,またそういう意味での「課題先進国」としての日本の国際的な使命として,極めて重要な課題となっているが、それを支える生涯学習政策の領域においても、実践的な研究成果を踏まえたイノベーションの活性化が期待される。
 先に述べたように,イノベーションは,「成長」ではなく「発展」が求められているときに必要なものである。そして,今,生涯学習政策には,「成長」に加えて,「発展」が求められている。
【イノベーションが実現するための二つの要素】
 イノベーションには,新たな知,アイデアの発見(ブレイク・スルー)とシステム全体への波及効果(スケール・アウト)の二つの要素があると考えることができる。どちらか片方だけではイノベーションは生じない。どんなに素晴らしいアイデアも,それが社会的にインパクトを持ちえない限り,それは単なるアイデアにすぎない。
 既存の知識や経験の新しい組み合わせの中から,新しい価値や方法が編み出され,それが社会に大きな変化をもたらす場合に,はじめてイノベーションと呼びうるものになる。
 
 
 
  参考文献
・J. A. Schumpeter, ”Theorie der Wirtschaftlichen Entwicklung, 2. Aufl”、1926, 塩野谷裕一他訳『経済発展の理論(上)』岩波文庫、1977。
・生涯学習研究e事典「今後の生涯学習政策の方向と課題」(浅井経子)
 
 
 
 
  



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