登録/更新年月日:2015(平成27)年1月9日 |
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【ブレイク・スルーを生む「相互作用」の活性化】 では,前述のような教育政策のイノベーションは,どのようにして起きるのであろうか。 まず一つは,「ブレイク・スルー」を生むために重要な条件として,異なる知識・発想の出会いということがある。その意味で,政策をめぐる3つの「現場」,すなわち「政策対象」である教育・学習の現場,「政策形成」の現場,そして「研究」の現場,これらの間の相互作用を活性化することが重要である。実際,教育をめぐる画期的な概念や方法論の多くは,このような相互作用の中から生まれている。 【スケール・アウトを促す手法】 しかし,政策的に,それ以上に難しいと思われるのは,そうして生まれた新たな知を,どうすれば社会的にインパクトのある形に持っていけるかである。カリスマ的リーダーの存在や,例えば印刷術の発明が、宗教改革による聖書の印刷の需要と重なって普及した例に見られるような、いわば天の時に恵まれるということも重要ではあるが,これらは偶然に支配される性格の強い要素である。 より操作可能性のある要素としては,一つの類型として,教育現場間の直接的な学び合い,移植という形が考えられる。行政のほか,社会教育関係団体の全国組織などは,この意味での波及に極めて大きな役割を果たしうる可能性を持っている。 大学など教育研究の場を通じての波及も重要である。現場からさまざまな課題が持ち込まれ,蓄積され,理論化・体系化され,教育を通じて現場にフィードバックされていくプロセスは,新たな知を生みだす過程としても重要であるが,それが波及していく上でも欠くことのできないものである。社会教育主事講習など専門人材の研修の機会は,このような意味でも重要な役割を果たしているものと考えられる。 政策現場を通じた波及としては,制度化,予算化,ガイドラインの策定,さらには審議会や有識者会議などにおける政策文書の取りまとめや、情報収集・提供、政策広報などのほか,政策評価や情報公開も場合によっては効果的な波及の機能を持ちうる。これは,うまく設計すればきわめて強力な影響力を持ちうる反面,実態の裏付けがなければ成立しないし,成立しても維持できない。また,機が熟さないまま行政が先走っても十分な効果は見込めない。 このようなプロセスの円滑化は政策のイノベーションを実現する上で極めて重要な課題であり,そのメカニズムや効果的な手法についての研究の蓄積が期待される。 br> |
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参考文献 ・合田隆史「生涯学習のイノベーション」日本生涯教育学会年報、第34号、2013年 |
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