生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

学校教育とボランティア活動 (がっこうきょういくとぼらんてぃあかつどう)

school education and volunteering
キーワード : 学習指導要領、教育改革国民会議、振り返り学習、ボランティア・パスポート、市民科
林幸克(はやしゆきよし)
3.学校教育におけるボランティア活動の課題と実践事例
  
 
 
 
  【課題】
1)ボランティア活動の内容の偏り
 学校教育においてボランティア活動を行う際、個々の子どもの興味・関心に応えることは難しく、クラス単位・学年単位で同一内容の活動に取り組む場合が多い。その活動が多岐に渡ればよいのであるが、実際には、高齢者や障害のある人等の施設訪問、学校の周辺環境等の清掃活動、ユニセフ等の募金活動に集中しがちである。また、教師自身が必ずしもボランティア活動に精通しているとは限らないため、活動に広がりが出ない場合もある。きっかけはどんな活動でも構わないが、「ボランティア嫌い」な子どもを生み出すことは避けたい。
2)振り返り学習の不足
 ボランティア活動を体験する際に、事前学習は十分時間をかけて行い、体験学習に臨むが、振り返り学習は不十分である場合がある。限られた授業時間数の中で活動を行うのであるから致し方ない面はあるが、振り返り学習にこそ体験学習の成否の鍵があることを忘れてはならない。子どもは活動中、当初想定していなかった様々な発見や疑問を持つものである。それを仲間同士で共有することで、体験そのものに対する理解がさらに深まり、その深まりの先には更なる活動へと発展させる可能性がある。振り返り学習をより重視したボランティア活動の実践が望まれる。
【事例】
1)ボランティア・パスポート
 神奈川県教育庁高校教育課は「かながわ高校生チャレンジボランティア推進の手びき」を発行し、「かながわ高校生チャレンジボランティアパスポートの活用」に関して、生徒の社会奉仕・ボランティア活動への意識の啓発、社会奉仕・ボランティア活動を依頼する関係機関へのPR、活動実績の記録・証明を挙げている。なお、2004(平成16)年度は県立高校生全員に、2005(平成17)年度以降は入学生全員にボランティアパスポートを配布した。また、栃木県私立作新学院高等学校の「作新学院ボランティア・パスポート」、山梨県立吉田高等学校の「ヤングボランティアパスポート」、福島県立四倉高等学校同窓会による「ヤング・ボランティア・パスポート」など、学校独自のものもある。
2)品川区における「市民科」
 教育特区である品川区が、従来の道徳、特別活動、総合的な学習の時間の一部を融合させて、独自教科として「市民科」を設置した。市民性の発達段階を「基本的生活習慣や規範意識」(小学1・2年生)、「よりよい生活を築く態度」(小学3・4年生)、「社会的行動力の基礎」(小学5・6年生、中学1年生)、「市民意識の醸成と将来の生き方」(中学2・3年生)の四段階に分けた。そして、それぞれの段階で「自己管理」、「人間関係形成」、「自治的活動」、「文化創造」、「将来設計」の五領域の能力を涵養することを目的、ボランティア活動が組み込まれている。
 
 
 
  参考文献
・立田慶裕編『参加して学ぶボランティア』玉川大学出版部、2004
・池田幸也・長沼豊編著『ボランティア学習』清水書院、2002
 
 
 
 
  



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