生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2007(平成19)年3月22日
 
 

事業評価の技法 (じぎょうひょうかのぎほう)

technique for the evaluation of the learning opportunities
キーワード : 事業評価、事業計画、アウトプット、アウトカム、評価指標
原義彦(はらよしひこ)
2.事業評価の視点
 
 
 
 
  【説明】
 これまでにみてきたように事業評価にはさまざまな種類があるが、現在、社会的要請の高い評価は、主に事業の実施後に行われるアウトプット評価とアウトカム評価である。このうち、とりわけアウトカム評価の重要性が高まっている。ここでは事業評価におけるアウトプットとアウトカムとはどのようなことであり、またそれを評価する視点について示すことにする。
 まず、事業評価でいうアウトプットとは、事業の実施によって直接的に生じる結果のことをいう。すなわち、学級・講座等であればその実施の直接的な結果である実施された学級・講座数や実施コマ数、あるいは参加者数などである。学習施設の利用事業(施設提供事業)であれば開館日数や利用者数などが一般的に用いられている。
 それに対して事業のアウトカムとは、事業の実施を通じての参加者や利用者の意識およびその後の行動等の変容、さらには地域住民や地域社会への影響など、アウトプットを通じて生じる変化のことで、通常、成果と呼ばれる。例えば、家庭教育に関する講座の実施後、その受講者が家庭で子どもと会話をする時間が増えた、というのは家庭教育講座のアウトカムとなる。なお、アウトカムには事業の実施や終了後、短期間で成果が得られるものと、反対に成果が得られるまでに長時間かかるものもある。さらに、アウトカムは最終的に到達する目標状態を最終アウトカムとして位置付けて、最終アウトカムが得られるまでの途中の段階で予想される変化や影響を中間アウトカムとして設定することもある。アウトカム評価には、このようなアウトカムの評価を含めて考えることができる。
 さらに、これらのアウトプットとアウトカムを評価する視点についてまとめておこう。事業評価では、評価の対象となるアウトプットやアウトカムをどのような視点から評価するかによって、その評価の結果は異なる。例えば、受講者数が定員を下回ったような学級・講座は、参加者1人当たりにかかる経費の点からみれば評価は低くなるかもしれない。しかし、参加した人たちの多くが、その後地域のボランティア活動を始めるようになったとすれば、学級・講座の効果という点からみればよい評価が得られるだろう。このように、評価は一つの視点からによるものでは一面的な評価になりやすいため、複数の視点から行うことがよいといわれる。
 そのような評価の視点として行政評価等でよく用いられているものに、必要性、効率性、有効性、公平性、優先性等がある。必要性という点からは、その事業を実施する必要性があるかということを評価する。それは事業そのもの必要性でもあり、また、主催者がその事業を実施する必要性という意味もある。効率性の視点では、経費や施設等が効率的に運用されているかという点から評価するもので、このうち、経費の効率性を意味するものに費用対効果がある。有効性の視点では、事業の実施によってどのような、またはどの程度の効果があったかという点から評価を行う。公平性は、事業サービスが広く公平に配分されているか、あるいは負担が公平に行なわれているかという点から、また優先性では、ほかよりも優先して実施するべきかとどうかという点から評価を行う。このほかにも評価の視点となるものを独自に設定することも可能であるが、独りよがりなものではなく、評価の視点として妥当なものである必要がある。
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
 



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