生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2015(平成27)年1月1日
 
 

先進諸国にみる少子高齢化と生涯学習振興 (せんしんしょこくにみるしょうしこうれいかとしょうがいがくしゅうしんこう)

キーワード : 合計特殊出生率、少子高齢化、移民、就労支援、生きがい・健康づくり
岩崎久美子(いわさきくみこ)
2.人口動態に対応する生涯学習施策
 
 
 
 
  【生涯学習施策として求められるもの】
 少子高齢化を踏まえ、生涯学習施策に求められることは、主に次の三つである。第一は、生産年齢人口の相対的減少から、国としての経済生産性の維持のため、高齢者や女性などの雇用・就労支援のための教育・訓練を行うこと、第二には、高齢者数の増加に対し、医療・社会サービスの負担加重にならないようにするための生きがい・健康づくりの施策を行うこと、第三に、就労移民を受け入れる国では、移民を受け入れることで生じる秩序維持、治安、共生の観点から、語学や市民性教育を実施することである。
【ヨーロッパの状況】
 以上の三点に関わる欧州の状況は次のとおりである。
 欧州の労働人口動態においては、新しく労働市場に参入する者よりも退職する者の数が上回り、徐々に労働人口が縮小していくことが推定されていた。一方で、年金受給額の減少と年金受給権者の増加により、退職を延長する高齢労働者が増えている実態もあった。高齢労働者が雇用され続け、生産性を維持するには、再び技能を身に付けることや技能を向上させることが必要である。欧州連合では、1990年代後半以降、「活力ある高齢化」が政策目標とされ 、高齢者に対する継続的な訓練機会が提供されている。
 また、経済危機の結果、高齢労働者、特に低熟練高齢労働者で失業者が増加し、働かない高齢者が増加することで、医療や社会サービスへしわ寄せがいくことになった。研究成果によれば、学習活動は、社会参加の一形態であり、個人的充足感に大きな役割を果たし、身体的にも精神的にも、高齢者の健康に寄与するなど、学習経験と健康には高い相関があることが明らかにされている。そのため、生涯学習への投資が医療支出などの社会サービスのコストを抑制すると想定され、この点からの政策介入が多くなされている。
 労働力としての就労移民を受け入れについては、就労移民は、一定時間の後、家族を呼び寄せ、定住の様相を見せるため、移民を受け入れ後は、次第に自国民と移民が混合し、民族的、文化的に多様な構成を持つ社会へと変化していく。そのため、移民との共生政策として、就労に対する教育・訓練、市民性獲得、語学習得などの教育が、その子供や配偶者をも対象として実施されている。
 
 
 
  参考文献
・厚生労働省大臣官房国際課海外情報室「諸外国における高齢者雇用対策について」『BUSINESS Labor Trend』2007年5月.
・European Commission, Education and Training 2020 Work Programme (Council Conclusions 2009/C 119/02).
 
 
 
 
 



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