登録/更新年月日:2011(平成23)年12月31日 |
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【課題】 1990年代のバブル経済崩壊以降、若者の職業生活から学校生活への移行が重要な課題となっていることに伴い、キャリアに関する研究も多くの学問分野でなされてきた。しかし、キャリアは学際的な課題である。キャリアとは人の一生涯における生き方全ての経験であり、社会的・職業的自立のためのキャリア発達を促すことがキャリア教育であるので、多くの学問が関連してくる。教育学、生涯学習、経営学、発達心理学、社会学など多岐の学問分野にわたっている。 キャリア教育研究をめぐる課題は、一つは広範な個別学問分野内でキャリアに関する研究が整合性をもたずに展開されていることである。キャリア形成、社会的・職業的自立、不安定雇用層からの脱却といった課題に対して、諸学問をどのように連携・融合させるのか。その際に核となる学問は何か。あるいは、個別の学問がそれぞれ核となり、それぞれの学問分野から課題に応じて他の学問と連結してあるいは単独で共通の課題にアプローチするのか。キャリア教育の学問的視座の明確化が課題となっている。 一つは、キャリアの概念に対する混乱と若者の社会的・職業的自立の現状に齟齬が見られることである。キャリア概念は、職業上の経歴のみとする考え方、職業上の経歴を中核とする考え方、生涯全体にわたる経歴とする考え方等が混在しているが、キャリア教育の議論の活発化に比例してキャリア概念に占める職業の比重を軽化させる傾向が広範に見られる。しかし、現在重要な課題となっているのは、社会的自立が可能な職業への若者の就職である。職業の比重をキャリア概念から希薄化させることは就職問題への対応を後退させることになる可能性がある。一方で、介護や育児などでキャリアが中断される可能性や、学校、家庭、地域等での生活のありようが個人の基礎的・汎用的能力の形成に影響があることを鑑みれば、キャリア概念を職業だけに狭くとらえることも適切ではない。若者の就職問題という現実に精緻に対応したキャリア概念の明確化がキャリア教育を研究する上での課題である。 これらの難問がキャリア教育研究の課題として積み残されている。 br> |
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参考文献 ・寺田盛紀「キャリア形成(学)研究の構築可能性に関する試論」『生涯学習・キャリア教育研究第1号』、平成17(2005)年3月 ・菊池武剋「キャリア教育とは何か」日本キャリア教育学会編『キャリア教育概説』東洋館出版社、平成20(2008)年、17頁 ・仙崎武・池場望・下村英雄・藤田晃之・三村隆男・宮崎冴子編著『キャリア教育リーダーのための図説キャリア教育』社団法人雇用問題研究会、平成22(2010)年、10〜11頁 |
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