登録/更新年月日:2011(平成23)年12月31日 |
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【説明・動向】 キャリア教育が求められる背景は、経済の問題、学校教育の問題、若者の問題に大別される。 経済の問題は、経済の長期低迷による雇用環境の変化である。1990年代のバブル経済崩壊後の経済情勢の長期低迷や国際的な企業競争の激化により、企業は経営の中核を担うコア人材のみを終身雇用や年功制で知られる日本的経営を適用する正規雇用労働者として厳選採用するようになった。コア人材以外は非正規雇用労働者に置き換える動きが広範に進み、即戦力を求める傾向が強まるとともに正規雇用労働者の求人数が減少した。日本的経営が維持されていた時期までは、企業は人間性や学歴で新卒学生を採用し終身雇用の中でOJTを中心に職務に関する教育訓練を施してきたが、日本的経営の変化とともに従業員への教育訓練費を削減している。労働者には採用時および就職後も基礎的・汎用的資質と高い職業能力が求められるようになった。企業は正規雇用労働者を中心に職業訓練を施すため、一度非正規雇用労働者になると職業能力を向上する機会も少なくなる。新卒時に正規雇用労働者として採用されることが死活的に重要になっている。 学校教育の問題は高等教育のユニバーサル化である。我が国の高等教育機関への進学率は50%を越えてユニバーサル化段階へと突入している。大衆化した大学等からは大量の新規学卒者が輩出されているが、正規雇用労働者の求人数は減少している。高等学校では普通科高校の在籍率が平成22年で72%であり、専門学科・総合学科と比べても就職状況が厳しく、将来設計が不明確なまま高等教育機関に進学している。そのため、大学等の高等教育機関での就職活動期が目前に迫ってから進路選択を迫られる。一方で、大学等の高等教育機関も就職率が学生募集等の経営に直結するため、将来の進路選択を先送りしてきた若者を就職させる必要に迫られる。それゆえ大学等は就職テクニックや資格など就職に直結するキャリア教育に走りがちである。しかし、企業が求めている人材はコミュニケーション能力などの基礎的・汎用的資質であり、企業ニーズとのギャップを生む結果となっている。 若者の問題としては、職業観・勤労観の未成熟や、基礎的・汎用的能力の不足、早期離職傾向、精神的・社会的自立の遅れ、進路意識・目的意識の希薄さなど社会的・職業的自立に関わる課題が指摘されている。 これら諸問題が複合的にからんで若者の社会的・職業的自立が大きな課題となり、ニートや無業者等の自己のキャリアを見通すことができない不安定雇用層が社会問題となっているためキャリア教育の推進が求められるようになったのである。 br> |
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参考文献 ・寺田盛紀「キャリア形成(学)研究の構築可能性に関する試論」『生涯学習・キャリア教育研究第1号』、平成17(2005)年3月 ・田中宣秀「高等教育機関におけるキャリア教育の方向性について−カリキュラムの構築を念頭において−」『生涯学習・キャリア教育研究第1号』、平成17(2005)年3月 |
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