登録/更新年月日:2006(平成18)年10月26日 |
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大学をめぐる諸環境は、18歳人口の減少をはじめとして、大きな変化を遂げつつある。 1)グローバル化 大学を取り巻く環境は、1990年代から大きな変容を遂げ、無視できないのがグローバル化である。日本の大学に留学する主として中国・韓国等のアジア諸国は人材育成に力を注ぎ、それが大きな経済成長につながっている。 日本からは、アメリカ、イギリスなどの大学留学も既に珍しいことではなく、MBA取得や専門的資格取得のため、一度就職してから実務的な人材育成に注力する企業も少なくない。前節では日本国内に限定したが、これまで以上に、国際的競争力のある人材育成は社会からの要請である。 2)知識社会化 また、社会全体の知識社会化は、それ以前の「20世紀型工業社会」と対比して、知識や技術のもつ意義が格段に大きくなる。知識を研究によってつくりだし、教育によって次世代に伝え、第三の機能として「社会貢献」が求められる。 研究活動においては、これまでのような研究者の知的探究心に基づく深遠な基礎研究だけでなく、社会の様々なニーズに対応できるような研究・開発活動が大学に求められるようになる。平成8(1996)年からの政府の科学技術基本計画において、重点研究分野が設けられ、大学における研究や人材養成のあり方に触れられているのもそのためである。 3)18歳人口の激減 これまで述べたように21世紀の社会で大学への機能や役割が期待される一方で、大学経営の一大不安要素は、18歳人口の激少である。なぜならわが国の大学の学生は高校を卒業してすぐ(18歳)、あるいは1年程度の浪人生活を経ての入学者が圧倒的に多く、社会人学生はマジョリティではない。私立大学では、彼らが支払う授業料収入にその大半を依存しているのが現状である。 出生率の低下に伴い、18歳人口は平成4(1992)年の205万人をピークに減少の一途を辿っており、2009年には約120万人まで減少し、その後の10年間は安定的に移行するものの、2020年頃から再び減少期に入り、2050年には約80万人に至るとされている(厚生労働省社会保障・人口問題研究所、中位推計)。これらの予測が持つ意味は大変深刻である。例えば現時点では毎年4万人の18歳人口が減っているが、大学入学志願者が約50%であることを考慮すると、毎年2万人もの受験生が減少することを意味し、これは平均的私立大学40校分の入学定員に相当するから、生半可な数字ではない。 さらに、2050年の18歳人口80万人という数字は、現在の大学・短大入学者数が毎年70万人であるから、今のままの進学率であれば30万人もの入学者減となり、多くの大学が淘汰されるという危惧が、高等教育界を覆っている。既に、相当数の私立大学、特に人口の少ない地方では、従来通りの入試は成り立たず、AO入試や推薦入学などあらゆる手段で「学生を確保」に乗り出さざるを得ないのはこのような事情である。 従って、知識社会化した21世紀では、終身雇用、年功序列といった所謂かつての大企業の吸収合併からみても「日本的経営」の破綻から学ぶべきものは、18歳人口だけを志願者とするのでなく、リカレント教育、社会人学生の受け入れなど、生涯学習社会、特に地域社会に開かれることで、その存在意義が生まれる。 br> |
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参考文献 山本眞一「大学の社会的責任」計画行政29巻2号、2006. |
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