登録/更新年月日:2006(平成18)年10月26日 |
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それでは、地域社会からみた大学への役割・機能への期待、あるいは連携の現状はどうであろうか。 1)バブル経済期の学園都市構想 18歳人口がピークを迎える1980年代後半から1990年代にかけてバブル経済の頃、旧国土庁(現国土交通省)大都市圏整備局において学園都市整備調査が実施され、大学の設置・誘致をめぐって全国各地で「学園都市構想」が数多く策定された。地域側の大学に対する期待は高く、かつ多様である。しかしながら、現在、地方自治体と高等教育機関との連携が成功している事例は、残念ながら多いとは言い難い。実際、地方では、誘致したはずの大学が経営上の視点から撤退するなどの問題も起きている。地域社会と大学の関係がうまくいかなかったのは、大学が真の意味で地域社会に「開かれた大学」でなかったからである。 2)地域活性化の求心力としての地域アイデンティティと「開かれた大学」 地方自治体では、公共事業依存型の地域開発が限界を露呈し、行財政が逼迫し、自己責任が問われるなかで、地域間競争から交流・連携へ、内発的なまちづくりが模索されている。その結果、魅力的なイメージ形成や地域アイデンティティ確立の難しさ、すなわちそのまちの個性や「らしさ」がないことに悩む自治体が多い。しかし、地域内の主体が愛着や誇りを持てないまちに対して、対外的に高い評価が与えられることはない。すなわち、地域住民や行政がそとに対して誇りをもってその魅力を情報発信していく必要がある。歴史的・文化的資源をはじめ、豊富な地域資源と市民の自発的活動があり、その地域への愛着や誇りなど「コミュニティ意識」がある。地域活性化には、単に一個人や自治体が独立に努力してもその成果は十分に現れない。従って、協働で効果的に地域活性化に向けて尽力することが望まれるが、このような協働現象を生起させるためには、個々人の努力の方向性を結びつける求心力やある方向性を共有していく必要がある。この求心力のひとつが、地域アイデンティティやコミュニティ意識から湧き出てくる。 すなわち、その地域に住むことの「意味」を問うものである。「そと」を意識することによって「うち」を再評価し、自己組織化していく、このシステムが筆者の提唱する「イメージ・ダイナミクスモデル」であるが、大学もまた、同様の構造を有する。大学改革の必要性や18歳人口の減少等、厳しい潮流の中で、大学を含め学校は外部からどう評価されているかを把握し、対外的に高い評価を得るために調査研究の成果や教育カリキュラム・設備の充実や学習情報を発信していく必要がある。なぜなら、18歳人口激減で淘汰されないために、大学を外部に開き、その魅力、個性、その大学である必然性をアピールすることが今後不可欠だからである。 3)「サテライト教室」による大学の生涯学習化と社会へのアピール このような認識のもとに、最新の動きとして、ここ数年の間に、少子化への対応として大学が社会人を対象とした公開講座を、交通至便の駅のターミナル周辺ビルに設置するなど、いわゆる「サテライト教室」の開設が相次いでいる。 今後は、IT革命によって、学習の空間・時間の制約から放たれつつある。こうした技術革新やメディアリテラシーを活用して、立地地域だけでなく、広い意味での地域社会への大学開放により、さらに社会貢献、地域貢献に寄与することが望まれる。 br> |
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参考文献 ・濱野和人、田中美子「大学の『第三の機能』を活用した学社融合の可能性」日本生涯教育学会論集27巻、2006. |
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