登録/更新年月日:2011(平成23)年3月6日 |
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ヨーロッパにおいて政策推進に際し使われるのは、「生涯教育」なのか、それとも「生涯学習」なのか。2010年現在、「生涯教育」を用いている例は見い出しがたい。一方「生涯学習」に関しては、政策推進の顕著な例が挙げられる。それは、欧州連合(European Union, 以下EUと略記)の行政府として位置付けられる欧州委員会(European Commission)が、「生涯学習プログラム」(Lifelong Learning Programme)という名の下に、初等中等教育にはコメニウス、高等教育にはエラスムス、職業教育・訓練にはレオナルド・ダ・ヴィンチ、そして成人教育にはグルントヴィとして、従来それぞれに実施されてきた事業を、2007年から「生涯学習プログラム」を構成する各部分として位置づけ直して、再編成したことである。 欧州委員会は、生涯学習の重要性を、端的に次のように説明する。「今日、生涯学習は、社会に全面参加する機会を全ての人に可能とするとともに、就労と成長においても鍵となる。」 さて、ヨーロッパにおいても、「生涯教育」がかつて政策推進でのキーワードであった。そもそも「生涯教育」は、ヨーロッパ発の概念である。政策用語としての始まりは、1955年にフランスでéducation permanente (ずっと継続する教育)を導入したことである。そして、その世界的広がりは、フランスで教育大臣としてその政策推進を指揮したポール・ラングラン(Paul Lengrand)がユネスコの成人教育課長となって、éducation permanenteなる語とその拡張した概念を普及させることから始まったといえる。 éducation permanente概念の普及には、次のような時代背景があった。1960年代後半、産業先進諸国は、義務教育全入をほぼ達成し、それより上の段階における就学率もかなり高まっていた。しかしながら、人生の初期段階における学校教育だけで立ちゆかない数多くの問題点が噴出していた。たとえば、ちょうどその時期、アメリカ、フランスに端を発した学生運動が、世界各地に拡大していた。そのような時期、生涯にわたって継続する教育という発想での政策が構想されたのである。 éducation permanente なるフランス語は、英語版ではlife-long educationやlife-long integrated educationとなった。ユネスコはlife-long integrated education(生涯にわたる統合された教育)を公式に用い、ラングラン自身は、自著の英語版においてlifelong educationを用いていた。そして、日本語では、「生涯教育」がその定訳となった。 ところが、ヨーロッパにおいて、「生涯教育」が政策用語として次第に前面に出なくなってきた。欧州委員会においても、生涯教育(lifelong education, éducation permanente)を使用することが、非常に限られていった。 br> |
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参考文献 ・Lengrand, Paul. An Introduction to Lifelong Education. London: Croom Helm, [1975]. ・澤野由紀子「世界の動き『生涯学習プログラム』がスタート: 社会をまとめる重要な素材に・EU」『内外教育』5749 (2007): 2-4. |
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