登録/更新年月日:2009(平成21)年4月27日 |
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先の問いに対する応答のひとつとして、生涯学習とデモクラシーを関連づけて考える方法があると筆者は考えている。デューイやコックのいうデモクラシーという観点を手に入れると、生涯学習が現代社会でどのような機能を果たしているのかという問題を、知識社会への移行や生き甲斐支援といった既存の見方とは異なる考察が可能になる。近代の個人化という側面ではなく共同化という側面、個人ではなくグループという側面から生涯学習の機能を観察する視点である。たとえば、生き甲斐を目的に集った生涯学習サークルにおいても、実際にそこで起きているのは、サークルをどのように維持し運営していくのかについての実際的な話し合いであり、それはときに人々を疲弊させもするが人々を強く結びつける要因にもなっている。学習そのものの意義や楽しみが人々を引きつける一方で、そのグループを維持させているのは、集ったときのおしゃべりや葛藤の解決をとおして他者の考えに耳を傾ける「協力の技能」(コック)である。このような生活様式としてのデモクラシーは、デモクラシーという言葉から連想される政治的ニュアンスを超えて、実際に私たちの生活にすでに根付き実践されてもいる。 生涯学習のなかで実践されている生活様式としてのデモクラシーに焦点を当て、その社会的機能を抽出することで、次のような点が明らかになると考えられる。ひとつは、学習の共同的側面である。学習が個人における何らかの内面的変化にとどまらず、グループがあるからこそ生じる意味に明らかになると考えられる。もうひとつは、生涯学習そのものの新しい機能である。生涯学習のもつ個人的価値にとどまらない社会的価値を明らかにすることもできると考えられる。このような意味で、生涯学習とデモクラシーを関連づけて考えることは、個人化を促進させる「学習社会」とは異なる社会の構想をもたらしてくれることと考える。 br> |
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参考文献 |
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