生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2015(平成27)年12月31日
 
 

宮城県にみる震災復興期の図書館 (みやぎけんにみるしんさいふっこうきのとしょかん)

キーワード : 東日本大震災、図書館支援、都道府県立図書館、震災支援、アーカイブ
熊谷慎一郎(くまがいしんいちろう)
2.被災図書館の復旧・復興過程
 
 
 
 
   津波による壊滅的な被災を受けた図書館は,現地での復旧は困難であり,新たな場所での復旧を目指すことになる。冒頭で指摘した「浸水域にあった館は被害甚大である」という点はまさにこの現地復旧ができない場合のことである。当然,この検討は図書館単独でなされるものではなく,まちづくり全体のなかで議論がされ,検討が進められていくものであり,「どこに」「いつごろ」施設を整備するかという点の検討に数年規模で時間が必要である。
 本格復旧までまったく図書館サービスを提供しないということは考えにくく,仮設の図書館サービスを提供することが求められるし,住民生活上直面する課題解決支援のひとつとして,自治体はその責務として提供すべきであろう。
 仮設で図書館サービスを行うための整備費用等は市町村等設置者による負担と多くの支援によって成り立っている。もちろん,図書館サービスを住民に提供するのは図書館の責務であって,設置者たる自治体の責務であるからそのための負担はやむなしとの考えもあろうが,図書館サービスの提供をどこまで行うかは当該自治体の行政政策上の位置づけであって,きちんと位置づけられていない場合は,あまり有効なサービスができない場合もある。このような本格復旧までに必要な仮のサービスに対して,体系的な支援策の整備が必要であろう。
 図書館が被災した場合,その基本となる「建物」「蔵書」「司書」という要素をそれぞれどのように手当てできるかを見極めて再建計画を立てる必要がある。これらが不安定な状態(例えば,職員は災害対策本部付けの業務に携わったきりである状況等)では,サービス提供自体が難しい。サービスリソースを適切に把握し,その復旧のためのリソースを調整・管理していく人的リソースが絶対に必要である。支援者側も,この点をしっかり抑えないと,余計な負担をかけてしまうことになりかねない。蔵書の復旧も同様である。復旧可能な資料なのかどうか,という部分を見極め,希少な資料は可能な限り復旧し,そうでなければ,買換などにより復旧させるという手法が考えられよう。そして,特に手当てが必要なのは建物の被災である。前述のように,建物が全壊した場合,津波により流失した場合は,移転・新築により復旧することになるが,この復旧までの期間は数年を要することが明らかである。国庫による災害復旧事業,復旧計画策定などの企画支援といった支援が有効である。
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
 



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