生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2014(平成26)年1月11日
 
 

教育振興基本計画 (きょういくしんこうきほんけいかく)

Basic Plan for the Promotion of Education
キーワード : 教育基本法、生涯学習社会
合田隆史(ごうだたかふみ)
3.課題
  
 
 
 
  【公財政支出に関する記述】
 中央教育審議会において教育基本法改正が議論されていた当時から,教育振興基本計画については,その中に教育に対する公財政投資に関する数値目標を書き込むことにより,教育予算を確保することがその大きなねらいの一つに位置づけられていた。その背景には,科学技術基本法(平成7(1995)年制定)に基づく科学技術基本計画(平成8(1996)年第1期計画策定)の中に,計画期間中における官・民の科学技術投資の水準に係る数値目標が盛り込まれ,それによって科学技術予算が飛躍的に伸びたとの理解が広がっていたことがある。
 特に教育に関しては,我が国の教育費が大きく家計負担に依存し,公財政支出の対GDP比がOECD諸国中ほぼ最低の水準にあることが問題とされ,特に教育界からは,計画に具体的な投資額ないしは「対GDP比でOECD諸国並みをめざす」といった趣旨の記述を盛り込むことが強く期待された。
 第1期計画においては,最終的に以下のような表現が盛り込まれた。
「OECD諸国など諸外国における公財政支出など教育投資の状況を参考の一つとしつつ,必要な予算について財源を措置し,教育投資を確保していくことが必要である。」
 第2期計画においても,この点の記述をどうするかが焦点となったが,最終的に次のような記述となった。
「教育の再生は最優先の政策課題の一つであって,欧米諸国を上回る質の高い教育の実現を図ることが求められている。以上を踏まえ,上述した教育の姿の実現に向けて,OECD諸国など諸外国における公財政支出など教育投資の状況を参考とし,第2期計画期間内においては,第2部において掲げる成果目標の達成や基本施策の実施に必要な予算について財源を措置し,真に必要な教育投資を確保していくことが必要である。」
 我が国の教育投資水準を考える際,OECD統計をはじめとする諸外国の水準を参考にするという方針がより端的に示されるとともに,本計画所掲の施策に必要な予算の確保がより明確に宣言されている。教育再生を掲げる安倍内閣の姿勢を明確に示しつつ,関係府省としても何とか折り合えるギリギリの表現ということであろう。
【課題】
 計画は実行されて初めて意味がある。都道府県については,第1期計画4年目の平成24(2012)年3月時点で,47都道府県中それぞれの基本計画策定済みが43都道府県,策定予定が3府県,検討中が1県となっている。
 第2期計画においては,これまで特に教育関係者以外における計画の認知度が必ずしも高くなかったとの指摘も踏まえ,情報発信とともに国民の意見を施策に反映させていく努力などが必要であるとしている。
 また,計画には,政策評価の座標軸としての意味もある。第2期計画においても,計画の進捗状況について定期的に点検し,その結果を施策等に反映させるとともに,広く国民に情報提供していくことが必要であるとされている。文部科学省においては,平成26年度概算要求における計画への対応状況を整理・公表しているが,今後ともこのような取り組みを行っていくとともに,国民の側でも,公財政投資に関する記述の帰趨だけでなく,計画の具体的な進捗状況についても注目し,積極的な評価・発信を行っていくことが期待される。
 
 
 
  参考文献
・科学技術基本計画 http://www.mext.go.jp/a_menu/kagaku/kihon/main5_a4.htm
 
 
 
 
  



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