生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

カナダの生涯学習支援 (かなだのしょうがいがくしゅうしえん)

lifelong learning in Canada
キーワード : 州独自の教育制度、成人教育、コミュニティ・カレッジ、職業的機能に関わる学習、ボランティア活動
小川誠子(おがわせいこ)
1.カナダの教育制度
  
 
 
 
   カナダには、ファースト・ネイションズ(First Nations)と呼ばれる先住民の教育、および軍隊や刑務所に関わる教育を除いて、連邦政府が直接運営する教育システムはない。連邦政府は、中等後教育(post-secondary education)、成人教育、職業訓練、公用語教育(英仏)、特に第二言語教育に対して財政援助を行なうことはあるが、基本的には、カナダ憲法第93条によって、教育システムは州の立法府の管轄と定められている。このため、教育法規や義務教育年限などは州によって異なり、教育行政も州を単位として行なわれる。連邦レベルに日本の文部科学省に相当する中央教育行政機関は存在せず、それぞれの州に文部科学省に相当する機関を設置している。ただし、州に教育に関する自治権があるとはいえ、カナダという国としてのまとまりも必要であるとして、各州の情報交換や相互協力を円滑にするために、1967年にカナダ教育担当大臣協議会(CMEC)を立ち上げている。各州は、相互に影響しあい共通点を見出しながら、独自の教育政策を展開し今日に至っている。
 しかし、カナダの教育制度は州政府の管轄事項であるとはいえ、州によっては各地方教育委員会にかなりの権限が付与されており、学校体系についても教育委員会によって多様である場合が多く、同じ州においても必ずしも共通ではない。そのような状況ではあるが、敢えて13の州・準州の初等・中等教育の学校体系を一般化すると、ニューファウンドランド州は3-3-3-3制、プリンス・エドワード・アイランド(PEI)州、ノヴァ・スコシア州、アルバータ州、ノースウエスト準州は6-3-3制、ニュー・ブランズウィック州は5-3-4制(英語系)と8-4制(仏語系)、ケベック州は6-5制、オンタリオ州、マニトバ州は8-4制、サスカチュワン州は5-4-3制、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州、ユーコン準州は7-5制、ヌナブト準州は6-6制となっている。なお、PEI州を除くすべての州には、5歳児を対象とした就学前教育(pre-school education)があり、ケベック州、オンタリオ州、マニトバ州では、4歳児も含めた就学前教育が提供されている。
 中等後教育機関は、代表的な機関である総合大学とコミュニティ・カレッジに加えて、ユニバーシティ・カレッジ(university college)、技術専門大学(institute of technology)、工芸学校(school of craft and design)、海洋専門学校(maritime institute)、遠距離教育(distance education)を提供するオープン・ユニバーシティやオープン・カレッジ、ケベック州の一般教育・職業専門教育コレージュ(CEGEP・セジェップ)、先住民カレッジ(aboriginal college)などが挙げられている。ユニバーシティ・カレッジは、BC州独特の中等後教育機関であり、基本的にはカレッジの機能をもち、各種の資格、ディプロマ、あるいは準学士を提供しているが、特定の分野では学士課程を持っている機関である。ケベック州のセジェップは、大学準備教育としての一般教養教育(2年制)と技術者養成のために技術教育(3年制)を提供するケベック州独自の中等後教育機関である。
 
 
 
  参考文献
・小林順子他編『21世紀にはばたくカナダの教育』東信堂, 2003
・National Institute for Educational Research for Japan (NIER) and UNESCO , Comparative Studies on Lifelong Learning Policies , NIER, 1997
・Schuetze, H. & Slowey, M., Higher Education and Lifelong Learners, Routledge, 2000
 
 
 
 
  



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