登録/更新年月日:2010(平成22)年1月5日 |
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【中央教育審議会答申におけるキー・コンピテンシー】 中央教育審議会は、平成20(2008)年1月17日に「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について(答申)」を示し、同年1月23日には、「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について(答申)」を発表した。この2つの答申は、考え方の基軸が共通するものであると思われる。このことは、改正された学校教育法第30条で学力の重要な要素として示されているが、DeCeCo計画とキー・コンピテンシー、その具体的調査研究であるPISA調査などにおけるコンピテンシー概念に、中教審は今後に求める学力を見出しているようである。 今後に求める学力観をPISA調査の視座からあげるならば、成熟した民主主義社会の建設のために必要な「民主的市民性(democratic citizenship)」に基づく教育の要求、ポスト工業化社会の経済への対応、テクノロジーの急激な変化への対応、「社会的統合」へのプロセスとしての異文化理解などがある。特に異文化理解においては、国際社会で発生する種々の社会問題をコントロールする力、そのための創造力と自己信頼能力の育成、たとえばシチズン・キャピタルな社会関係を構築する力、多元的な価値観と個人主義的な思考とを結合する力を獲得することがあげられる。アカデミズムに基づく専門性とは異なった広範で柔軟な学力を求めたのである。 PISA調査などでは、「これまで何を学んだか」ではなくて、「これから何ができるか」が重要であり、知識やスキルの質や量を競うのではなく、知識やスキルを活用、普及をするための「思考力」「応用力」「創造力」が問われる。このことは、知識の生産、普及、活用というナレッジ・マネージメントを担いうる技能として知識基盤社会(knowledge-based society)が要求する内容に一致し、「生涯学習社会への移行」と「知の生成」という課題のもとに、教育と学習の必要性が存在する。 学習社会から知識基盤社会へのパラダイム転換の中で、社会を形成する人々が、知識の創造、活用、普及という知識経営(knowledge-management)できる力を、教育がどのように養成するのかという重要課題が提示されている。総合的な「知」が求められる時代における生涯学習の必要性をいうのであり、国民一人一人が社会生活を営んでいく上で必要な知識・技能等を習得・更新し、それぞれの持つ資質や能力を伸張することができるよう、必要に応じて学び続けることができる環境をつくるという課題が示されたのである。生涯学習には、個人の要望に基づく学習とともに、自立した個人の育成やコミュニティ形成につながるような学習を求める社会的要請があり、持続可能な社会の構築の要請などをとおして、「知の循環型社会」の実現を図ることが求められている。DeCeCo計画には、すべての年齢の人々を対象とする国際的な学力指標の確定という目的があり、これを受けた中教審は、求めるべき成人能力について「社会を構成し運営するとともに,自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力」としての「人間力」を定義したのである。 br> |
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参考文献 ・ 「キー・コンピテンシーとDeSeCo計画」『天理大学学報』第219輯,天理大学,平成20年。 ・立田慶裕編『キー・コンピテンシー〜国際標準の学力をめざして』明石書店,平成18年。 ・国立教育政策研究所編『生きるための知識と技能−OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2000年調査国際結果報告書』ぎょうせい,平成14年,ほか。 |
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