登録/更新年月日:2010(平成22)年1月5日 |
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【キー・コンピテンシーの定義に至る経緯】 OECDが学力標準の策定に取り組み始めたのは1968年のことであり,教育研究革新センター(CERI)を発足させ,その後,各国から各種のデータの取得に努めている。1988年から,国際教育指標(INES)の策定のための研究を開始し、年次報告書『図表でみる教育』を刊行した。また、国際教育指標の策定のための具体的調査研究が始まり、2000年からは学校教育調査プログラムとしての生徒学習到達度調査(OECD Programme for Internatinal Student Assessment、以下PISA調査)が実施されている。キー・コンピテンシーの定義に強い影響を与えているPISA調査は、OECD加盟国を中心にして、2000年、2003年、2006年、2009年の4回にわたり実施された。高度に教育を受けた社会において必要とされる知識と技能の獲得の状況を、「読解力(読解リテラシー)」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」と「問題解決能力」といった枠組みの中で測定し、これからの社会に必要な学力としての社会的スキル、コミュニケーションスキルや問題解決スキルなどを取り上げた。OECDが実施するプログラムには、PISA調査の成人版ともいうべきPIAAC調査(OECD Programme for International Assessment of Adult Competencies)もある。 【キー・コンピテンシーの内容】 PISA調査は、「生きるための知識とスキル(knowledge and skills for life)」という枠組みで学力を測定している。PISA調査で測りうる生徒の学力観には、学校教育でこれまで重視されてきた教科・科目における知識の習得よりも、それらを活用して社会に出てうまく生きる力を測定することに重点を置いているCERIの教育指標が存在するのであり、それはDeSeCo計画の目的に深く関わる。 こうした考え方から特定されたキー・コンピテンシーでは、第1の広域カテゴリー(社会的に異質な集団で共に活動・交流する力)に、ア)他者と良好な関係を作る力、イ)協力する力、ウ)争いを処理し、解決する力があげられ、第2の広域カテゴリー(自律的に活動する力)に、ア)大きな展望の中で活動する力、イ)人生計画や個人的活動を設計し実行する力、ウ)自らの権利、利害、限界やニーズを表明する力が示され、第3の広域カテゴリー(対話の方法として相互作用的に道具を活用する力)に、ア)言語、記号、テクストを相互作用的に用いる力、イ)知識や情報を相互作用的に用いる力、ウ)技術を相互作用的に用いる力が求められた。またキー・コンピテンシーの中核には3つの広域カテゴリーを連関させる核心の部分があり、「思慮深さ」(reflectiveness)という形で示された。「思慮深さ」においては、個人にその技術について考えさせ、自分の経験と関連づけて適合させようとする力が描かれる。この背景には,1990年代からの認知科学の影響があり、学習過程とは自分を客体化して自分の思考で判断するというメタ認知の立場も主張される。価値というものは個人がそれぞれに構成するものだという構成主義に基づく学力として,キー・コンピテンシーが登場したといえる。 br> |
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参考文献 ・ 「キー・コンピテンシーとDeSeCo計画」『天理大学学報』第219輯,天理大学,平成20年。 ・立田慶裕編『キー・コンピテンシー〜国際標準の学力をめざして』明石書店,平成18年。 ・国立教育政策研究所編『生きるための知識と技能−OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2000年調査国際結果報告書』ぎょうせい,平成14年,ほか。 |
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