生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2012(平成24)年9月25日
 
 

中高生の地域ボランティア活動 (ちゅうこうせいのちいきぼらんてぃあかつどう)

キーワード : 地域ボランティア活動、生徒指導、特別活動、キャリア教育、参画
藤原靖浩(ふじわらやすひろ)
2.中高生の地域ボランティア活動の意義
 
 
 
 
  (1)ボランティア活動の中心的役割を担う学生の存在
 学生はいつの時代においても、世界中のあらゆる場所においてボランティア活動の中心であった。社会の改革者の先頭に立って、世界を変える先導者となったのはやはり若い学生たちの溢れ出るような力であった。世界におけるボランティア活動の歴史がそれを明らかにしている。
 1800年代のイギリスで起こった「セツルメント運動」(Settlement Movement)は、ケンブリッジ大学やオックスフォード大学の学生によって開始された。彼らの根本には「学びと貢献」という基本的な考え方があり、自分自身でケースワークなどの活動を通して労働者や貧困に苦しむ人々のことを理解し、知識を得た。同時に、社会への参加を可能にする生活改善や教育支援の方法を模索していったのである。セツルメント運動は、大学拡張運動の一環としても注目され、日本でも1925年に東京帝国大学において「学生セツルメント」が誕生しする等、大きな影響を残している。
 第一次世界大戦後のヨーロッパで行われた「ワークキャンプ」も、学生の若い力を使ったボランティア活動であった。戦争後のヨーロッパでは、国境を越えて数多くの学生がこの運動に参加した。彼らは寝食を共にしながら共同生活を行い、被災者や社会的弱者のために活動し、戦争後のヨーロッパを影ながら支えていたのである。日本でも、1960年代〜1970年代にかけてワークキャンプが実施され、日本各地で学生によるボランティア活動が行われた。これは、全国の学生が集う場となり、青少年運動や社会福祉事業の基礎となったと言われる。
 学生のボランティア活動は、いつの時代でも新しい動きを生み出してきた。それは若者の溢れる力をうまく活用した結果であり、今後もこの若い世代の力を活用することが非常に重要であると考えられる。
(2)中高生の地域ボランティア活動の意義
 中高生が地域ボランティア活動に参加することは、学校教育の教科外活動である特別活動及び学校生活全体を通して行われる生徒指導の機能を補完する役割をもつものとして、非常に有意義なことである。そこには、地域ボランティア活動を通して身につけることが期待されている力が関係している。
 中高生は、地域ボランティア活動を通して、自分が地域社会の一員であることを実感し、地域社会に貢献することの大切さを学ぶ。学校とは異なる場所の異年齢、同年齢の人間関係を通して、他者への共感と自分が役に立っているという実感を得る。また、物事への関心を深める、問題や課題を発見する、問題や課題を仲間と協力して解決するといった、子どもの将来の自己実現につながると思われる力を高める効果が期待できる。そして、活動全体を通して充実感を体得し、コミュニケーション能力を育むと共に、この自己実現を達成するための力は、中高生の学びへの意欲を高め、ひいては学校教育の「生きる力」へとつながっていくのである。このような体験の積み重ねを通して、中高生は市民性や社会性を獲得し、学校から社会へと歩んでいくための基礎を築いていくことができると考えられる。
 地域ボランティア活動は、学校の特別活動や生徒指導を通して、中高生が身につけた力を発揮する本番、また学校教育だけでは十分に身につけることができなかった力を補完するための場所として機能することが求められているのである。
 
 
 
  参考文献
・文部科学省『中学校学習指導要領解説 特別活動編』ぎょうせい、2008年。
・文部科学省『生徒指導提要』教育図書、2010年。
 
 
 
 
 



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