生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2008(平成20)年1月1日
 
 

地域課題とネットコミュニティ (ちいきかだいとねっとこみゅにてぃ)

キーワード : 地域課題、ネットコミュニティ、インターネット、掲示板、協働
桜庭望(さくらばのぞむ)
1.ネットコミュニティの定義とインターネット以前の動向
  
 
 
 
  【ネットコミュニティの定義】
 コミュニティとは、主として地域性によって結ばれた共同体を示していたが、情報ネットワークの発達により、情報交換が行われる場もコミュニティと呼ぶようになった。ネットコミュニティとは、共通する趣味や関心ごと、属性(出身、地域等)等により特定の参加メンバーにより情報交換が行われる場、あるいは集団と定義することができる。現代では情報交換の手段は主としてインターネットとなり、ネットコミュニティはインターネットコミュニティとも呼ばれる。ネットコミュニティは、特定の集団に対する参加者の帰属意識によって結ばれ、住んでいる地域に限定されることなく多種多様なものが生まれている。参加者の自発性によって成り立っていることからネットコミュニティは、地域課題への取り組みにも有効活用することができる。
【インターネット以前の動向】
 地域の情報ネットワーク環境には、ミニコミ誌・タウン誌などの印刷媒体の他、平成4年1月に制度化されたコミュニティFMや、無線愛好家による特定のグループなどがある。文字情報を主とした電子的なネットワークは、昭和60(1985)年、電電公社の民営化にともない電話回線が電話以外に開放され、パソコン通信として展開された。個人が開局したパソコン通信のホスト局は掲示板を主とし「草の根BBS」と称され、その会員は市内電話料金でアクセスできる地域住民が大多数であったため、地域的な特性が強いものであった。
 こうした地域内の情報を他地域とつなげようとする試みとして、北海道の6つの草の根BBSの運営者が手動で書き込みを交換して、共有掲示板を運営するという北海道インターネット(HINT)が平成元(1989)年まで活動を行っている。
 組織的な展開例として、大分に昭和60(1985)年5月に発足した地域運動グループ「コアラ」がある。当時の平松守彦大分県知事が提唱した「一村一品運動」の情報化版であり、大分県内の利用者ニーズを背景として、当時のふるさと創生資金をもとに、大分県内どこからでも市内電話料金で通信ができる「豊の国ネットワーク」というインフラ整備へと発展した。コアラは、北海道新聞が運営するオーロラネットと平成2(1990)年よりポーティングによる常設の電子会議室共有実験を行い、さらに接続を他地域のネットワークへと拡大していった。こうした取り組みは、平成4(1992)年のインターネット商用利用開始時まで続けられた。
 草の根BBSの一例として、昭和63(1988)年に北海道東藻琴高校に開設されたNonkyNet(ノンキーネット)は、東藻琴村教育委員会のパソコン通信講座として、掲示板を通じて地域の活性化等について70名の会員が情報交換を行っていた。
 各地域で展開されるパソコン通信網に対して、PC-VAN、NIFTY-Serveなど全国的な通信網は数百万人の会員を有した。多くの趣味や話題を共有するグループの中に、PC-VANのグローバルビレッジ「村おこし応援団」のような掲示板も生まれた。こうしたグループの情報交換は、ネットワーク上からオフラインミーティングという現実の場におけるリアルな人間関係を経て、地域のイベント開催へと発展することもあった。「村おこし応援団」では、主に北海道池田町についての情報交換が行わていたことから、昭和63(1988)年8月、池田町に全国からグループの仲間が参集して大会が開催された。
 行政としてもこうした動きに着目し、北海道庁は昭和62(1987)年度から「農業地域産業複合拠点調査」というプロジェクトの一環として、PC-VAN内に「ノースウィンズ」というグループを設け地域の情報交換を促した。
 
 
 
  参考文献
・尾野徹『電子の国「COARA」』エーアイ出版株式会社、平成6(1994)年
・桜庭望「Nonkyネットの概要」農業情報1989、農業情報パソコン通信大会実行委員会編、平成1(1989)年
 
 
 
 
  



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