生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2009(平成21)年9月1日
 
 

子どもの社会化と地域 (こどものしゃかいかとちいき)

socialization of children and local community
キーワード : 社会化、地域社会、準拠集団
阿部耕也(あべこうや)
1.子どもの社会化と集団
  
 
 
 
  【概念】
 社会化は「個人がその所属する社会や集団のメンバーになっていく過程」と定義され、新しいメンバーが社会・集団において制度化されている知識、技能、行動様式、価値などを習得しながら、それらに適応することをいう。個人はその生涯において複数の集団を通過するから、生涯のどの段階においても社会化は課題となるが、特に、生物学的存在に過ぎない新生児が集団のなかで社会的存在となっていく過程は、最初期の社会化として重要である。
 社会化は、主として個人が所属し通過する集団の特性によって促される。家族、仲間集団、学校、職業集団などは、そのメンバーに固有の態度、価値、行動様式などを要求する。社会化とは、個人の側からみれば、それぞれの集団の文化を内面化する過程である。
 個人がその態度や判断、価値を形成するにさいし、影響を受ける集団を準拠集団(reference group)と呼び、多くの場合それは所属集団でもあるが、数多くの集団が存在し、またメディアを介してそれらにふれる機会が多い現代社会においては、個人が所属していない集団が準拠集団となることがある。予期的社会化(anticipatory socialization)とは、個人が将来的に所属すると見越した集団を準拠集団とすることによって起こる社会化である。
【集団と地域社会】
 集団とは、その内部に持続的な相互行為と社会関係の集積がある、複数の人々の集まりを示す概念である。個人の社会化を集団が促すというとき、それはメンバーとの何らかのかたちの相互行為および社会関係によって媒介される。
 社会化に影響を及ぼすものとして、集団とはまた違った系列の概念として地域社会がある。地域社会とは、地理的に一定の広がりをもった領域であるテリトリーの上に、人々の生活関連から生ずる相互行為が集積されることによって形成される社会である。
 同じ地域に住んでいる人々が、その生活の必要から近隣を組織単位として結成した集団が、地域集団である。住民全体に共通する生活的要求を取り上げて活動する町内会・自治会等は包括的集団と呼ばれ、他に年齢集団(子供会、青年団、老人会等)、職能集団、外郭団体、自発的集団(市民グループ)などが存在する。
 一定地域を生活圏とし、地縁に基づく地域集団は、共通の文化と利害関係の中で生活することによって、相互扶助と団結の意識と行動様式をもつ共同体を形成していく。子どもをめぐる集団の数が少なかった時代には、地域社会が子どもの社会化に対する影響力はきわめて大きかったと考えられる。
 こうした地域集団は、「地域の教育力」の一つとして機能する。
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
  



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