登録/更新年月日:2009(平成21)年9月1日 |
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【地域の教育力】 地域の教育力という場合、第一に、何らかの意味で子どもの社会化に直結する教育力が想定されている。子どもの生活の場が家庭と学校あるいは塾に限定され、その社会化にかかわる集団が固定化し、他者との具体的な相互行為・社会関係が限定されるならば、たとえメディアを介した情報や他者との接触が多くとも、「地域に生きる個人」としての社会化は進まないだろう。 子供会をはじめとした地域における年齢集団のグループ活動を通して得られる自然・文化・社会との交流体験、また自発的でありつつも、家庭や学校とは異なったルールに従う異年齢の子ども集団における体験は、子どもの社会化にきわめて重要な役割をはたすと考えられる。 【環境としての地域】 地域が子どもの社会化に及ぼす影響は、集団における相互行為を介したものだけではない。ムーア(R.C.Moore)は、児童期における日々の遊びをはじめとした活動を通じて子どもが環境とどう関わるか、それによってどのような発達を遂げていくのかについて生態学的な調査研究を行った。その結果、子どもの遊び場として大人が用意した公園や冒険遊び場など公的な空間以上に、空き地や路地などの「非公式な空間」で創造的な遊びをしていること、大人の管理の目がない子どもたちだけの活動空間も発達の重要な機会となっていることを示した。都市化する前の地域社会がもっていた遊び場として自然環境だけでなく、都市化された地域社会においても、その環境は子どもの社会化に大きな影響を及ぼすのである。 【地域社会における相互連関】 子どもの社会化に関与する要素として、家庭、保護者、学校、その他地域社会の施設等があるとすれば、それぞれは独立ではない。例えば両親も教師も、地域社会のあり方に影響を受けている。 子どもの社会化において地域社会が果たす影響は、上述の意味で直接的なものと間接的なものが想定できる。地域社会に存在する個々の集団が子どもの社会化を促すというだけでなく、個々の集団およびその連関は地域社会の包括的なあり方に左右され、そのことによって地域は子どもの社会化に影響を及ぼす。 施策の対象・レベルで言うなら、親や教師など子どもを育む主体への働きかけは前者であり、地域づくり・まちづくりを促す施策は後者となる。 生涯学習まちづくりや地域活性化のための取り組みは、もし子どもを直接的な対象としないとしても、その意味で子どもの社会化に関わる重要な構成要因である。地域のあり方が変わるということは、地域社会の構成要因である個人、集団、組織のあり方とその相互連関のあり方が変わるということであり、そのことによって、子どもの社会化のあり方が変わると考えられるからである。 br> |
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参考文献 ・T.パーソンズ&R・F・ベールズ『核家族と子どもの社会化(上・下)』(黎明書房,1970-1972年) ・R.K.マートン『社会理論と社会構造』(みすず書房,1961年) ・山村賢明『社会化の理論─教育社会学論集』(世織書房,2008年) ・Robin C. Moore "Childhood's Domain : play and place in child development", London; Dover,N.H.: Croom Helm, 1986. |
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