生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2008(平成20)年12月31日
 
 

学びあい、支えあい事業 (まなびあい、ささえあいじぎょう)

キーワード : 地域活性化、地域の教育力、地域課題、住民の自立、連帯感
今西幸蔵(いまにしこうぞう)
1.学びあい,支えあい事業の概要
  
 
 
 
  【定義】
 住民が地域のさまざまな課題に取り組み、問題を解決していこうとするボランティア活動や体験活動をとおして、地域の人々が「ふれあう、支えあう」地域の連帯感を形成し、それによって地域の教育力の再生を図ることを目的とした文部科学省による地域活性化推進事業のこと。
【動向】
 住民のきずなによる安全で安心な地域づくりをめざし、社会の現代的課題や地域課題の解決能力の向上を図ることを目的とした「学びあい,支えあい」地域活性化推進事業が、文部科学省の補助事業として平成19(2007)年度から全国各地で実施されている。
 事業実施の背景として、地域の教育力が低下していること、地域や住民が解決すべき現代的課題や地域課題が増加していること、かつ複雑化していることがあげられており、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うという課題があると考えられている。
 地域の教育力の低下については、平成16(2004)年3月の中央教育審議会「今後の生涯学習の振興方策について(審議経過の報告)」において、「地域の教育力の向上」「地域課題の解決」が重点的に取り組むべき分野であると指摘され、切実な地域課題に適切に対応していくことにより、個性豊かな活力ある地域社会を築いていく必要があると提言されていることから、この事業につながる支援が模索されたのだと思われる。
 また地域の教育力については、児童・生徒の保護者の55.6%が「以前に比べて地域の教育力が低下している」と答え、「個人主義の浸透がその要因である」と分析していることが文部科学省調査(平成17(2005)年10月実施)などで分かっている。
 そこで同事業実施委託要綱では、事業の趣旨として、社会の急激な変化に伴う住民同士の連帯感の欠如や人間関係の希薄化等による地域教育力の低下に対処するため、住民がボランティア活動や家族参加の体験活動、地域の様々な課題に取り組みながら解決する活動などを通して、住民同士が「学びあう,支えあう」地域のきずなづくりを推進することが必要であると説明されている。
 具体例として「家族のきずなを深める体験活動」として家族で農村まるごと体験、まちの歴史と伝統を体験、親子でスポーツ体験、親子登山と自然観察といったプログラムや「地域のきずなを深める活動」としてのボランティア活動、高齢者から学ぶ町、安全・安心なまちづくり、環境美化学習活動、公民館で活動などといった事例が示されている。
事業内容として地域の教育力の再生を図ることが強調され、(1)広域で活動でき、広い関係機関・団体等で組織する運営協議会の開催、(2)地域のきずなを深め、地域の教育力の再生を図る事業が求められた。
 平成19(2007)年度が文部科学省による委託事業としての初年度にあたり、624百万円の予算措置が講じられ、54運営協議会と577実行委員会が設置され、917事業が実施されている。
 平成20(2008)年度においては、57運営協議会と628実行委員会が設置され、1,026事業(新規事業319)が実施される予定であり、地域のコミュニケーション力が高まり、活性化に貢献し、幅広い学習活動が進展することが期待されている。
 
 
 
  参考文献
・『「学びあい,支えあい」地域活性化推進事業に関する調査研究報告書』((財)全日本社会教育連合会,平成20年3月)
・『平成19年度 奈良県「学びあい,支えあい」地域活性化推進事業報告書』(奈良県「学びあい,支えあい」運営協議会,平成20年3月)
これらのほか,各地の運営協議会で発行されている報告書が参考となる。
 
 
 
 
  



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