生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2008(平成20)年12月31日
 
 

学びあい、支えあい事業 (まなびあい、ささえあいじぎょう)

キーワード : 地域活性化、地域の教育力、地域課題、住民の自立、連帯感
今西幸蔵(いまにしこうぞう)
2.学びあい,支えあい事業の意義と成果
 
 
 
 
   本事業については、その趣旨をふまえて事業効果と目標が設定されている。
 事業効果という点からは、(1)事業に参加した住民が地域課題について関心を持ち、地域独自の活動としての進展を図り、それを全国的に普及すること、(2)学習成果の発表をフォーラムの開催などを通じて行い、地域ぐるみの住民参加の機運を醸成し、そのことが住民の社会参加活動を促すことなどが望まれている。
 事業目標としては、住民が本事業に参加することから地域課題を発見し、課題解決に関わろうとすることが全国的に拡大することが期待されている。こうした中で住民が共に学びあい、支えあう地域づくりが進展するのであり、やがては住民間の連帯感が生まれ、地域のきずなができ、結果として地域の教育力が再生されるということが事業目標としてあげられている。
 次に事業が実施された地域の多くでは、住民の事業に対する関心や意欲だけでなく満足度も高いという評価があった。このような意見を集約すると次のようになる。
 第1に、参加した住民に仲間意識が生まれ、住民間の交流の場がつくられ、地域のコミュニケート力が向上することがあげられる。特に高齢者と子どもたちとの間のコミュニケーションに効果があったとされる。
 第2に、地域について知る機会になったという意見が多い。公民館などの地域の社会教育施設の存在が知られ、社会教育の意義が拡がったということがあり、また地域の歴史や文化に関する学習などの伝統文化を継承することの意義を見出すことができるようになったのである。
 第3に、地域課題や生活課題に対する学習関心が高まり、学習態度が形成されるようになったことがあがる。ものづくり体験、農業体験、食育、健康、環境整備などの学習機会が設けられ、そこで住民が学んだ成果が社会参加につながるものになっていくきっかけとなる点である。
 第4に、防災意識や危険防止意識が高まるような学習機会が提供され、地域の安全・安心が問われるようになったことである。防災体験、防災グッズの製作や安全マップの作成が行われ、地域の防災力が向上したと考えられている。
 第5に、住民が事業をとおして地域福祉活動に参加するようになったということがある。障害のある人への正しい認識が進み、介護学習が取り組まれ、地域の自治会、地域福祉協議会、民生・児童委員会などとの協力がある。
 第6に、学習成果の発表という形で作品発表やシンポジウム開催などが行われたことがあがる。参加した住民に達成感が生まれている。
 第7に、Web上にHPを作成したり、ブログに参加したりして、本事業についての情報提供をする住民が生まれたことがあがる。
 19年(2007)度を終えての評価として、文部科学省が当初にめざしていたようなモデル事業の実施という点において物足りない状況があるという意見もある。今後は、関連する他の事業との連携も含めて、事業の趣旨が生かされるような事業実施が望まれている。
 
 
 
  参考文献
・『「学びあい,支えあい」地域活性化推進事業に関する調査研究報告書』((財)全日本社会教育連合会,平成20年3月)
・『平成19年度 奈良県「学びあい,支えあい」地域活性化推進事業報告書』(奈良県「学びあい,支えあい」運営協議会,平成20年3月)
これらのほか,各地の運営協議会で発行されている報告書が参考となる。
 
 
 
 
 



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