登録/更新年月日:2009(平成21)年9月15日 |
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【字義】 公理論(又は公理系)を特定の領域で解釈して作る理論をモデル理論というが、これはそのことをいっている。 【説明】 特定領域理論は、特定の領域で公理論を解釈して作る理論で、公理論のモデル理論と呼ばれる。 生涯学習研究の場合には、経験の世界に問題解明のための特定領域理論を構築することになるが、これは俗にいう経験科学領域の理論で、研究対象及びその要素を公理論の要素(記号)と対応させ、公理論の命題に対応する仮説の体系(つまり理論)を構成することになる。これは公理論の写像であるから、公理的方法による理論構成を行うことになり、経験科学のある領域における公理論的な性格をもった理論となる。 その特定領域理論の仮説(命題)については、まず、あてはまる事例があるかどうかを調べる「事例発見的研究」を行う必要がある。公理論は形式的体系であるから経験的事象との照合を行う必要はないが、特定領域理論は理論的整合性の検討を免除される代りに、経験的事象との照合を行う必要がある。作業としては、特定領域理論の中で命題計算を行い、あてはまる事例があるはずだという仮説を導出して、そのような事例を発見するための研究を行う。 従来の科学理論はあくまで一般仮説(普遍命題、すべてにあてはまる命題)の確立を目指しているため、事例にあまり重きを置かないが、このような理論にあっては事例の発見にも意味がある。ただし、それはあくまで特定領域理論の検討を行う手がかりの1つにすぎない。どのような性格を帯びたデータであるにせよ、ある命題にかかわる事例が発見されれば、その命題は事象と照合できたことになり、その理論から排除されないですむ。 「事例発見的研究」によって排除されずに済んだ仮説(命題)は、次に、それがどの範囲まで通用するのかを調べる「数量的研究」に回される。従来はこれを一般化と称して、すべての範囲で通用するような法則の定立をめざすことが多かった。しかし、反証主義がいうように、それは無理であり、せいぜいその命題がどの範囲まで通用するのかを調べることができるにすぎない。 「事例発見的研究」や「数量的研究」によって得られた知識は、特定領域理論で理論の基本命題(公理にあたるもの)や派生命題(定理にあたるもの)を修正したり、追加したりする際に使われる。 また、そのような特定領域理論の成果は、さらに公理論へフィードバックされ、公理論の発展を図る際に利用される。公理論は形式的体系であるから、特定領域理論にかかわりなく、演繹法により独自にその発展が図られるが、新たな定理の導出にあたっては、経験科学の成果が参考となることもある。例えば、ある特定領域理論で従来からの理論では説明できないような新発見がなされた場合、公理論にフィードバックされれば、それが新たな定理の導出に役立つ。 「事例発見的研究」や「数量的研究」は特定領域理論の発展を図るために行われるが、その特定領域理論は「事象説明・予測」に用いられる。説明と予測は同じことで、過去と現在の事象にかかわる問題の解明を説明といい、未来や可能性についての説明を予測といっているにすぎない。 「事象説明・予測」は、単なる知的関心によるものから、自然・人間・社会とかかわるもの、実用的な技術にかかわるものに至るまで、実にさまざまな問題について行われる。 br> |
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参考文献 ・山本恒夫『事象と関係の理論』筑波大学生涯学習学研究室、2001 ・山本恒夫「事象としての生涯学習」筑波大学大学院博士課程教育学研究科「教育学研究集録」第24集、2000 |
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