生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

博物館とボランティア (はくぶつかんとぼらんてぃあ)

museum and volunteer
キーワード : 博物館、ボランティア、地域連携
石川昇(いしかわのぼる)
3.博物館におけるボランティア活動の意義と課題
  
 
 
 
  【博物館及び博物館利用者からみる意義】
 ボランティアの活動により博物館活動が拡充され、多彩になることにより、新たな博物館利用者やリピーターを生む。博物館の展示、資料や標本が充実し、使いやすくなるということもある。また、職員にはない地域住民の視点が、施設や展示における住民のニーズの反映、バリアフリーの促進、資料収集における情報提供などさまざまな面に役立てられる。また、口コミ、ポスター掲示、チラシ配布など広報の面、地域の人々を博物館に案内するなど、地域と博物館を結ぶという意味でボランティアが活動するという事例もある。
 ボランティアの活動が博物館利用者にとって、学習機会の拡充となり、博物館がより魅力的かつ身近になる。そして、ボランティアとのコミュニケーション、交流も大きな意義を持つ。ボランティアの知識、感動を伝えたいという情熱、その真摯さ、謙虚さに接し、ボランティアと知識や感動を共有することは大きな喜びとなる。さらに、見学や体験をして、知見や感想を人に話したいという希望を満足させることになる。
 また、社会から見れば、地域の生涯学習施設、文化施設、研究施設としての博物館がより充実することで、地域の文化活動、交流活動が活発になる。さらに、ボランティア活動、とくに教育的、文化的なボランティア活動の意義を社会に知らしめることになる。
【ボランティア活動者からみる意義】
 第一に好きなことができるということで、好きな博物館で、好きな分野のことを見たり聞いたり、触ったり、人と話したりできる。そして、蓄積した知識、学習の成果としての能力を発揮することで、自己を社会に表現し、社会参加、社会還元を行うことができる。そのことによって、人と知識、感動を共有、共感したり、御礼を言われたりすることで喜び、達成感を味わうことになる。
 さらにボランティア活動により、博物館職員、利用者、ボランティア同士との新たな人間関係を築くことができる。それは家庭、仕事、地域における人間関係とは異なる、新たな同好の士同士の人間関係であると言える。
【課題】
 博物館におけるボランティアの導入は約3割であり、今後、博物館界において、さらにボランティア活動についての認識を広め、導入を促進する必要がある。
 また、ボランティアを導入した博物館については、ボランティアの活動に対する意欲、士気を高め、個々人の能力を発揮できるようにし、博物館、ボランティア双方にとって、そして、博物館利用者にとって有意義な活動を実現することが求められる。それは、地域社会においても有意義な活動であるとともに、地域における博物館の存在意義を高めるようなものでありたい。
 さらに、ボランティアの募集、活動、研修などの運営全般について、ボランティア自身が自立的に実施していけるかも課題である。
 
 
 
  参考文献
・社会教育審議会社会教育施設分科会「社会教育施設におけるボランティア活動の促進について」1986年
・社会教育審議会社会教育施設分科会「博物館の整備・運営の在り方について」1990年
・生涯学習審議会「今後の社会の動向に対応した生涯学習の振興方策について」1993年
・石川昇「市民とともに創る博物館‐なぜ、ボランティア制度を導入するのか‐」『博物館研究 Vol.40 No.5』2005年
 
 
 
 
  



『生涯学習研究e事典』の使用にあたっては、必ず使用許諾条件をご参照ください。
<トップページへ戻る
 
       
Copyright(c)2005,日本生涯教育学会.Allrights reserved.