生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2011(平成23)年10月29日
 
 

LAC法を用いた学習相談 (らっくほうをもちいたがくしゅうそうだん)

キーワード : LAC法、学習相談、学習塾、短期療法、生徒指導
藤原靖浩(ふじわらやすひろ)
3.学習塾において短期間のLAC法を用いた学習相談
  
 
 
 
   これまでの事例において、学習塾などの私的教育機関、学校教育の延長線上に存在する一学校外教育現場において、健常な学生にLAC法を用いて、短期間で学生の成績向上を図った事例は存在しない。短期間のLAC法の有効性は、短期療法に見られる。主要な短期療法の事例は、学校教育現場でしばしば使用され、すでに長期と短期の個人療法の間には、信頼に足る差異がみられないという結果もある。この結果から見ても、LAC法は短期療法的にも活用できると考えられる。
1)短期間のLAC法を行う際の留意点
 短期間のLAC法では、第1段階から第10段階までの導入時に、変更点がある。(1)短期間のLAC法は、長期目標の設定が困難であり、第7段階の生活分析日程図(表)の作成を行わない。(2)第8段階、第10段階の評価を、短期的に行うため「毎日に行動を評価する」に変更する。(3)第9段階の新しいLAC法の作成は、1つのグループに9枚以上の個別ラベルが貼られた時のみ行うこととする。
2)高校生女子Aの事例
 テスト1週間前の学習を効果的に行い、成績を上げたいという主訴に基づいて、短期間のLAC法を健常な高校生(A)に対して使用した。
 LAC法を始めるにあたって、まず初回面接でLAC法について説明した後、テストの日程を確認した。次に、1週間のテスト勉強について具体化し、10段階へ導入した。Aの学習経過は「T期 テスト1週間前期間」と「U期 中間テスト実施期間」に大別でき、テスト結果が全て返却された後、最後の面接を行った。最後の面接では、テスト結果について、Aに意見を求めた。良かったテストは賞賛を与え、悪かったテストはその理由を確認した。AはLAC法の継続について非常に前向きであった。
2)高校生女子Aのテスト結果から
 テスト後の高校生に対するLAC法の効果は1)テストの成績(点数・順位・偏差値)が高いこと2)提出物などテストに関連したものが提出できていることの2点で評価した。Aはテストの成績も向上し、順位も上昇した。Aのテスト結果とLAC図を比較した結果、LAC図に貼った個別ラベルの中で、未達成の項目がある科目ほど点数が低くなっていることが確認された。また、最初にLAC図を作成した段階で平均(M)の値が低い項目が多い科目についても点数が低くなることが確認された。一方、項目がすべて達成されたグループは点数も高くなっており、Aは最終的にクラス順位・学年順位共に上位であった。なお、個別ラベルの数と点数には明確な関係が確認できなかった。
 また、AのLAC法から得られた高得点を取るための2つの要因は@.Mの値が90以上の項目がすべて達成されていることA.Mの値が90以上の項目が最低1つ以上貼られていることであった。他方、点数が低くなる要因は@.Mの値が70以下の項目しかないことA.Mの値が90以上であっても未達成であることの2点であった。
 Aに行った短期間のLAC法の結果、LAC法がテスト1週間前のような短期間でも学習効果が促進される可能性が示唆された。サンプルを増やして検証していく必要があるが、このようなLAC法の使用方法は従来までの研究には見られなかったもので、今後のLAC法の研究に新しい視点を与えるものとなった。これを基に、今後の発展的研究として、テスト勉強以外でも受験勉強や夏休みの効率的な学習にLAC法を用いるといった例も考えられる。
 
 
 
  参考文献
・栗原慎二「短期カウンセリングモデルによる進路カウンセリングが高校生の進路発達に及ぼす影響」『カウンセリング研究』、第40巻、第1号、pp.59-69、2007。
・John J.Murphy,Solution-Focused Counseling in Meddle and High Schools.the American Counseling Association,1997(市川千秋・宇多光訳『中学校・高校でのブリーフカウンセリング』二瓶社、2002)。
 
 
 
 
  



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