登録/更新年月日:2006(平成18)年10月19日 |
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1)ボランティア学習の捉え方 ボランティア活動はその活動領域・フィールドに制限はない。しかし、教育として取り組む場合は、ある程度の制限や枠を設けて、教育活動に適するように意図的に調整することが求められる。教師等学習支援者にしてみればボランティアを教育する、高校生にしてみればボランティアを学習する側面が強調される。ボランティア活動という無限に広がる素材の中から一部分を切り取って学ぶことがボランティア学習である。 ボランティア学習の特徴は3つある。第一は、「直接的な社会体験学習」の導入段階として、学習に対する動機づけに相当する事前学習の重視である。第二は、机上の知識・理解を「直接的な社会体験学習」を通して活きた知識・理解へと誘う、体験によって学ぶことである。第三は、事後学習として、新たな学びや気づきを発見・共有する中で、自分自身の活動を振り返り、更なる段階へと導くことである。教育実践として展開する場合は、ボランティア活動ではなく、このボランティア学習の概念を用いることがより適切である。 2)ボランティア学習がもたらす効果 高校生がこのようなボランティア学習に取り組む効果は看過できない。特に、高校生という時期に取り組む故の意義がある。高校生自身の選択による学習だけを続けていけば、人間関係に広がりが生まれにくい場合がある。いつでも、どんな状況でも自分と気の合う仲間と過ごすことができるわけではない。一人の市民として生活していく中で、年齢の異なる人々、価値観の異なる人々、言語や文化が異なる人々など、様々な人々の関わりがある。自分の意思・意見を表現する、また、相手の思いを受け入れるといったコミュニケーション能力がなければ、相互理解は深まらない。対人関係形成に関わる態度や能力、自分自身や他者、それらを取り巻く社会全体に対して興味・関心を持ち、目を向け、理解しようとすること、そして、その過程で自己肯定感や社会的有用感を獲得することなど、ボランティア学習には、高校時代はもちろん、その後の発達段階にとって求められる普遍的な価値が含まれている。これは、各種支援・促進施策の実施の有無に拘わりなく注目される価値であり、思春期という多感な時期にある高校生が、そうしたボランティア学習を通して、自己表現や他者受容の楽しさや難しさを経験することは有意義である。 また、ボランティア学習の内容に関して、自分では得意だと認識していたことが、実際にやってみると思うようにできなかったり、あるいは、その逆の場合がある。自分の将来と関連づけてボランティア学習を捉えることも可能であり、その学習経験をもとにして、卒業後の進路をより具体的に考えることにつながり得る。このようなボランティア学習に取り組むことで、自分自身に対する理解が深まると同時に、関わり合う他者やそれらを取り巻く社会全体に対する理解や興味・関心も広がる。また、高校生が短期的に進路を考える場合でも、中・長期的に将来を見据える上でも、ボランティア学習の果たす役割は大きい。 br> |
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参考文献 ・興梠寛『希望への力 地球市民社会の「ボランティア学」』光生館、2003 ・林幸克「高校生のボランティア学習の効果的な展開に関する検討−高校入学までの体験に基づく考察−」国立オリンピック記念青少年総合センター研究紀要、第3号、2003 ・林幸克「ボランティア学習の効果に学習集団規模が与える影響」教育研究所紀要、第12号、2003 |
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