生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年10月19日
 
 

高校生のボランティア学習 (こうこうせいのボランティア学習)

キーワード : 社会体験学習、自己肯定感、社会的有用感、学習指導要領、ボランティア先進校
林幸克(はやしゆきよし)
2.ボランティア学習に関わる動向
 
 
 
 
  1)教育関連政策の動向
 中央教育審議会を中心とした動向では、1990年代は「生涯学習体系への移行」との関わりでボランティア活動が論じられた。その後、「生きる力」の育成をキーワードに、ボランティア活動の意義を認めた上で、ボランティア活動支援のための環境整備が進められた。それと同時に、ボランティア活動の評価についての言及があり、その活動実績の評価をすることでボランティア活動の振興・定着を図ろうとする姿勢もうかがえた。なお、この評価を具現化する形で出てきたのが、2000年代に示されたボランティア・パスポートであるといえる。
 生涯学習審議会を中心とした動向に関しては、1990年代前半は、ボランティア活動の定義が示され、生涯学習との関わりからボランティア活動の支援・推進が強調された。1990年代後半になると、ボランティアの学習成果の活用に注目が集まり、入学試験や就職試験での評価に反映させること、情報提供や学習相談、ボランティア・コーディネーター養成などの学習環境整備の充実を図ることが重視されるようになった。
 教育現場への影響をみると、1998(平成10)年の学習指導要領改訂の中で、ボランティア活動の表記が初めてみられ、道徳や特別活動、総合的な学習の時間で取り組むことが示された。また、高等学校の新設教科「福祉」では、社会福祉全般にわたる専門教育が実践的に行われている。
 2000年以降は、教育改革国民会議の影響が大きく出ており、最終報告以降、文部科学省の21世紀教育新生プランが示され、それを受けて学校教育法や社会教育法の一部が改正された。また、それまではボランティア活動の表現が使われていたが、教育改革国民会議で奉仕活動が用いられて以来、奉仕活動の表現が散見されるようになった。
2)ボランティア学習類似用語の整理
 1970年代の奉仕活動から始まり、社会参加活動やボランティア活動などを経て、今日では社会奉仕体験活動が用いられるようになり、奉仕に回帰する形となっている。ボランティア活動という言葉が広く浸透し、定着している中で奉仕活動を使用するのは、焦点の絞り方にある。ボランティア活動は、その活動分野・領域が多種多様であらゆる活動が含まれるため、ボランティア活動という言葉から抱く人々のイメージは必ずしも一致しているとは言い難い。また、社会貢献的活動もあれば自己完結的な活動もあり、ボランティア活動の意義に対する人々の認識も異なっている。そのようなファジーな意味を有するボランティア活動よりも、若年世代に現実社会を直視することを促し、他者ために活動するという、ある程度一致した認識を持ちやすい奉仕活動の方がわかりやすく、インパクトがあった。
 そうした社会的機運がある中、奉仕活動ではなく、ボランティア活動を重用しようとする姿勢が見受けられる。1998(平成10)年の特定非営利活動促進法、1998(平成10)年に改訂された学習指導要領、2001(平成13)年に一部改正された学校教育法、社会教育法をみるとそれが明らかである。各種答申などではなく、法的拘束力を有する法律などの中でボランティア活動の語が用いられていることは注目に値する。
 
 
 
  参考文献
・長沼豊『市民教育とは何か ボランティア学習がひらく』ひつじ書房、2003
・林幸克「高校生の参画を促すボランティア学習に関する一考察」法政大学大学院紀要、第53号、2004
・林幸克「高校生のボランティア学習に対するレディネス−中学時代の所属部・クラブ活動との関係に関する一考察−」日本特別活動学会紀要、第13号、2005
 
 
 
 
 



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