生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2007(平成19)年12月23日
 
 

近江八幡市のふるさと学習 (おうみはちまんしのふるさとがくしゅう)

hometown learning of Omihachiman-city
キーワード : ふるさと学習、歴史・文化・自然の総合的な学習、過去・現在・未来の時間軸、個人学習・相互学習・集合学習、大学との連携
安部耕作(あべこうさく)
3.大学との連携によるふるさと学習調査
  
 
 
 
  【経緯】
 近江八幡市教育委員会生涯学習課と滋賀大学生涯学習教育研究センターは、共同研究により平成16年度に「近江八幡市民のふるさと学習に関する調査」を実施した。大学と行政の長所・短所をうまく組合せて共同研究の質を高めて人文・社会科学系分野での官学連携の手法を確立することを目的として、大学と行政がそれぞれ役割分担して共同研究を実施した。
【共同研究の体制】
1)共同研究の組織体制
 近江八幡市教育委員会生涯学習課と滋賀大学生涯学習教育研究センターは、「滋賀大学・近江八幡市官学連携型教育プログラム開発モデル事業推進委員会」を組織し、研究テーマとして市民の子育て学習支援とふるさと学習支援の2つを設定した。研究テーマごとに専門部会を置き、ふるさと学習支援については「郷土学調査研究部会」を設置して共同研究を実施した。「郷土学調査研究部会」は、滋賀大学からは専任教員2名が共同研究員として参加した。近江八幡市・近江八幡市教育委員会からは、学校教育課、文化政策課、環境課、企画課、文化振興課、商工観光課、農政課、図書館、市史編纂室の職員の他、公民館長、社会教育委員、大学生が共同研究員として参加した。 
2)役割分担
 近江八幡市教育委員会は、調査票の作成・印刷・発送・回収、調査標本の抽出、1次データの入力作業の外部業者への依頼、入力データの大学への送付、調査報告書の印刷製本等の事務的作業を行った。大学の助言に基づく適切な共同研究員の選出や、大学の提案する研究仮説や課題、調査票を机上の空論としないため共同研究員を通して現場の声を反映させて仮説等を精緻化する役割を担った。
 滋賀大学生涯学習教育研究センターは、研究テーマの提案や研究仮説の提示、共同研究員選出の助言、共同研究のスケジュール策定、調査票作成、調査結果の分析、調査報告書の執筆等を主に担当した。
【共同研究の成果】
 市民のふるさと学習を支援しまちづくりへとつなげていくためには、歴史等ひとつに偏るのではなく歴史・文化・自然等の総合的な学習を支援する必要性がある。そのため総合的に市民のふるさと学習実態を把握することが必要である。また、ふるさとの過去についての市民の認知度や、現在のふるさとへの愛着を確認し、未来のまちの姿についてどのような意向を市民が持っているのか確認するため過去・現在・未来の時間軸から調査研究を行う必要がある。個人学習・相互学習・集合学習の3つの視点から学習実態を把握し、3つの学習形態をうまく組み合わせることで学習成果が高まる。これらの仮説は滋賀大学生涯学習研究センターの提案であり、行政からの発想で出てくるものではなかった。行政側は大学側の提案が現場の実態と乖離していないか共同研究員を通して現場の声を聞いて確認したり事務的作業を全て担当して大学が研究に専念する体制を確保した。その結果、大学・行政は双方の利点を生かしながら共同研究を進めることができた。
 
 
 
  参考文献
・近江八幡市教育委員会・滋賀大学生涯学習教育研究センター編『近江八幡市民のふるさと学習に関する調査』近江八幡市教育委員会生涯学習課、平成17(2005)年     
・安部耕作「教育行政における大学資源の活用−地域家庭教育支援を事例として−」『日本生涯教育学会論集27』日本生涯教育学会、平成18(2006)年 
・安部耕作「近江八幡市民のふるさと学習に関する考察」『日本生涯教育学会論集28』日本生涯教育学会、平成19(2007)年
 
 
 
 
  



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