登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日 |
|||||||||||||
|
|||||||||||||
|
|||||||||||||
【定義】 学校教育(フォーマルエデュケーション)の枠組みの外で、特定の集団に対して一定の様式の学習を用意する、組織化され、体系化された(この点でインフォーマルエデュケーションと区別される)教育活動を指す。 【意義】 ノンフォーマル教育という語が注目されたのはP.H.クームスによる“World Educational Crisis”(1968年)においてであった。クームスは、いかなる場所で、いかなる方法で学ばれるか、またそれが学校教育のなかに見いだされるか否かにかかわらず、教育を学習と同義ととらえるとしたうえで、教育をフォーマル、ノンフォーマル、インフォーマルの3つの様式に分類した。 もちろんノンフォーマルエデュケーション自体は1960年代に出現したものではない。この形態の教育はむしろ学校教育よりも歴史は古い。現代においてこの語が持つ意味は、教育=学校という考えが一般的となっている状態で、学校教育の限界性を認識し、学校以外の組織的教育の重要性を指摘していることである。ただし、1960年代には、学校教育が十分に普及していなかったアジア、アフリカ、ラテン・アメリカ諸国で、農村開発に貢献するための、あるいは貧困層の基本的要求に対応する教育戦略として構想された。 【特質】 (1)目的・対象 社会のさまざまな集団の学習要求に応えることを目的とし、年齢、経済的状態、学歴など、参加する要件に厳しい制限はない。したがって、フォーマルエデュケーションの対象とならない者にも、広範に教育機会を提供することができる。 (2)教育内容 目的意識が明確な学習者の、学習要求、生活環境に対応して内容が編成される。学習者の生活で直ちに生かされる知識・技能が中心的内容となる。内容の系統性よりも、既存の学問領域にとらわれない問題解決型の構成でなければならない。 (3)組織 フォーマルエデュケーションのように統一的な組織ではなく、学習者や地域の状況に対応して、多様で柔軟な組織が要求される。教育の領域に留まらず、社会・経済的諸活動と統合されるという見地から、農業、労働、福祉、保健・衛生などの他の領域との協力関係が重要である。 (4)経費 物的条件について、学校や地域開発センターなど既存の施設設備を活用することが可能である。人的条件に関しても、指導者としての資格要件は厳密ではなく、地域のさまざまな専門家を活用できる。また、パートタイムであることが多いため、職務時間外に学校の教師を利用することも可能である。コミュニティ開発計画と結びつく場合には、教育以外の財源から経費を引き出すこともできる。 このように、ノンフォーマルエデュケーションの特徴を整理したとしても、実際のプログラムは多種多様であり、その機能についても見解が分かれる。一つは、単に組織的教育機会提供の拡張に過ぎず、フォーマルエデュケーションの補完的機能を果たすのみであるとするものである。これに対し、ノンフォーマルエデュケーションの特質への着目が、フォーマルエデュケーションの柔軟化を促進し、両者を統合した新たな教育制度を構築することができるとする考えがある。 br> |
|||||||||||||
|
|||||||||||||
参考文献 ・P. H. Coombs & Manzoor Ahmed, Attacking Rural Poverty −How Nonformal Education Can Help, Johns Hopkins University Press, 1974 ・渋谷英章「低開発諸国におけるNonformal Educationの検討」日本生涯教育学会年報.第1号、ぎょうせい、1980年 ・渋谷英章「インドにおけるNonformal Educationの論理構造」筑波大学教育学系論集、第7巻、1983年 |
|||||||||||||
『生涯学習研究e事典』の使用にあたっては、必ず使用許諾条件をご参照ください。 |
|||||||||||||
Copyright(c)2005,日本生涯教育学会.Allrights reserved. |