生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

社会教育調査法 (しゃかいきょういくちょうさほう)

キーワード : 社会教育計画、学習ニーズの把握、社会の教育要請の把握、生涯学習の振興、統計的調査
水谷修(みずたにおさむ)
3.生涯学習の振興と社会教育調査
  
 
 
 
  【生涯学習の振興と社会教育調査】
 社会教育調査には、対象とする社会教育の事象によってさまざまな種類があるが、生涯学習の振興に必要な調査という観点からは、特に、集団内の学習ニーズに関する調査、社会の教育要請に関する調査、社会教育の経営力や外部環境に関する調査が重要である。
1)学習ニーズ調査
 個人の自主性・主体性を重視する生涯学習では、学習ニーズが学習行動に大きな影響をあたえると考えられるため、まず、学習ニーズを把握し、それをもとに、計画の立案や学習プログラムの開発・改善を図る必要がある。調査はそのようなニーズを把握する有力な手段であり、社会調査の手法を用いた質問紙調査は、潜在的な要求の把握などの面で一定の限界があるものの、住民の全体的傾向を客観的に把握するのに適した方法である。学習ニーズの調査には、このほかにも、学習情報提供システムの利用情報や図書館の貸出情報などの既存の統計資料を活用する方法、施設の利用者などへの自由面接法、講座受講者の感想等を記録した文集などを用いたドキュメント分析、調査者自身が講座等に参加して、その活動を観察し記録する参与観察法などがある。
2)社会の教育要請・地域課題調査
 生涯学習の振興において、個人のニーズと社会の要請のバランスが重要であるといわれる今日、社会教育や生涯学習振興の課題を、学習ニーズ調査の結果をもとに検討したのでは、多くの人々が共に解決にあたらなければならない現代的課題や地域課題などが抜け落ちる恐れがある。そのため、地域調査や地域のリーダー層を対象とした意識調査を行い、地域固有の具体的な課題を明らかにする必要がある。
3)教育経営力・外部環境調査
 社会教育行政の事業実績・評価や各種の経営資源など、社会教育行政の教育経営力に関する調査を行い、そのデータを分析することによって、生涯学習の振興における社会教育行政のもつ特性や強みと弱みを明らかにし、社会教育行政がかかわることのできる活動を把握する必要がある。一方、他行政や民間教育機関等といった外部環境の変化がもたらす社会教育行政への影響を調査データから予測し、その変化に適応するための課題を明らかにすることも必要である。その上で、外部環境分析と教育経営力分析の両方から得られる情報を総合的にまとめた上で、学習ニーズとの関連や他行政あるいは民間との役割分担などの観点から、社会教育行政が取り組むべき課題を明らかにする必要がある。
【住民参加による社会教育調査】
 近年、自治体などが実施する調査の中には、専門家の手をかりながら、住民が主体となって企画から報告までの一連の活動をすすめ、その結果を計画の立案や実践活動に生かそうとする試みがある。そのような調査活動はデータの収集だけでなく、地域の実態を学び地域の諸課題に対する問題意識を高める機会となる、参加者同士の繋がりを強化し、一体となって計画の立案や実践活動に取り組むきっかけとなるといった、いわば副次的な効果をもたらす。生涯学習への住民の参画の重要性が指摘される今日、このような住民を巻き込んだ調査活動は、それを促す有力な手段となりうる可能性をもっている。

 
 
 
  参考文献
・国立教育政策研究所社会教育実践研究センター「社会教育主事のための社会教育計画I」平成15(2003)年
・鈴木眞理他編著「生涯学習の計画・施設論」学文社、平成15(2003)年
・岡本包治他編「生涯学習推進計画」第一法規出版、平成3(1991)年
 
 
 
 
  



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