生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

社会教育調査法 (しゃかいきょういくちょうさほう)

キーワード : 社会教育計画、学習ニーズの把握、社会の教育要請の把握、生涯学習の振興、統計的調査
水谷修(みずたにおさむ)
2.社会教育調査の方法
 
 
 
 
  【社会教育調査の方法】
1)統計的方法と事例的方法
 データの収集および処理という観点から大別すると、調査の方法には統計的方法と事例的法がある。統計的方法とは、平均、度数分布、比率、相関係数、統計的検定などの統計的技術を用いて、対象となる複数の社会的事象を記述する方法であり、社会教育調査では、住民全体の傾向を数値によって記述しようとして行われる学習ニーズ調査の方法がこれにあたる。一方、事例的方法は、少数の事例について集中的な調査を行い、そこで得た資料をもとにして全体の問題をも解明しようとする方法である。社会教育調査では、少数の人を対象に、個人の生涯学習歴などを丹念に調査し分析して、その結果をもとに学習支援のあり方を検討しようとする方法などが、これにあたる。
2)統計的調査の種類
ア.全数調査と標本調査
 統計的調査は、調査対象すべてに調査する全数調査(悉皆調査)と、調査対象の中から一定の方法により抽出された標本(サンプル)のみを調査し、その結果から調査対象全体を推定しようとする標本調査に分けられる。
イ.標本抽出の方法
 標本にするかどうかを確率的にきめる無作為抽出法と、それを意図的に決める有意抽出法に大別される。無作為抽出法には、単純無作為抽出法、系統抽出法、多段階抽出法、層化抽出法などがあり、有意抽出法には割当法や典型法などがある。
ウ.調査実施方法
 調査票への記入を、回答者自身が行う自記式調査法と調査員が行う他記式調査法に大別される。自記式調査法には郵送法、留め置き法(配票法)、集合調査法があり、他記式調査法には面接法、電話法、郵送法がある。また、これらを組み合わせて調査が行われる場合もある。各調査方法には、調査票の回収率や難易度、誤記の可能性、経費などに関して長所と短所があるため、それを理解した上で、調査の目的や予算、期日、調査員確保の見通しなどを勘案し、どの方法を用いるかを決める必要がある。
エ.調査データ分析の方法と視点
 分析方法については、パソコンの普及と集計・分析ソフトの技術的な発展などにより、社会教育調査でも検定や多変量解析などが用いられ、成果をあげている。分析の視点については、調査データの活用などを勘案して各調査によって独自に設定されることになるが、一般的な視点の例として、「地域差」「世代間格差」「他事例との比較」「経年変化」などがあげられる。また、学習ニーズ調査では、満たされていない学習ニーズ解明のための「学習ニーズと学習行動のギャップの把握」、学習ニーズを内容や方法、目的などの諸要素が関連しあった構成体として捉えようとする「学習ニーズの構造的把握」などの視点が有効である。
 なお、このような分析の視点を導入する場合には、調査票の作成にあたって工夫が必要である。たとえば、「他事例との比較」や「経年変化」では、比較する調査と学習の概念や選択肢を同じにし、「学習ニーズと学習行動のギャップ分析」では、学習ニーズと学習行動で、項目や回答形式、選択肢を同じにする。また、「学習ニーズの構造的把握」では、クロス集計等によって各要素間の関係が明らかにできるように、1つの学習活動ごとに内容や方法、目的を回答してもらう形式を取り入れることになる。
 
 
 
  参考文献
・国立教育政策研究所社会教育実践研究センター「社会教育主事のための社会教育計画I」平成15(2003)年
・国立教育政策研究所社会教育実践研究センター「社会教育調査の方法」平成10(1998)年
・杉山明子「社会調査の基本」朝倉書店、昭和59(1984)年
 
 
 
 
 



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