生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2013(平成25)年12月23日
 
 

キャリア教育のイノベーション (きゃりあきょういくのいのべーしょん)

innovation of career education
キーワード : 企業、相互互恵関係、地域の力、キャリア教育、家庭教育
安部耕作(あべこうさく)
3.しがふぁみ(滋賀県家庭教育協力企業協定制度)
  
 
 
 
   滋賀県家庭教育協力企業協定制度とは、家庭教育の向上に向けた職場づくりをはじめ社会全体で子どもの育ちを支えるために、経営者・従業員をあげて自主的に取り組む企業と滋賀県教育委員会が協定を結び、協力して滋賀県の家庭教育の向上を推進しようとする制度である。斎藤元教育長が、鳥取県教育委員会の鳥取県家庭教育推進協力企業制度をモデルに提起した事業である。平成25(2013)年11月28日現在で、協定締結企業・事業所数は1,280社である。協定を申し出る企業を受け付けるという待ちの姿勢ではなく、滋賀県教育委員会生涯学習課の職員が担当地域を決めて企業に赴き協定締結を依頼した結果である。
 協定の対象企業は、制度の趣旨に賛同し滋賀県教育委員会が提示する5つの取組のうち2つ以上に取り組む企業である。取組1は「我が社の子育て環境づくりを進めよう!」である。職場で従業員が家庭教育の講話を聞く機会を設けたり、家庭教育に関するポスターを掲示する等が主な内容である。取組2は「働く姿を見せよう、仕事について語り合おう!」である。従業員の子どもたちに大人の働く姿を見せたり、地域の子どもたちを企業で職場体験として受け入れること等が主な内容である。滋賀県では、中学校2年生全員が5日間の職場体験をする中学生チャレンジウイークを実施している。取組3は「子どもの体験活動を支援しよう!」である。学校や地域での子どもたちの様々な活動に企業、地域住民の一員として積極的に協力、支援をすることが主な内容である。取組4は「学校へ行こう!」である。参観日や保護者会などへの参加を働きかけたり、休暇が取りやすい半日休暇制度や職場環境づくりに努めたりするなどして、従業員が積極的に学校へ行ける職場をつくることが主な内容である。取組5は「「淡海子育て応援団」に加入しよう!」である。地域の企業として「淡海子育て応援団」に参加し親と子が利用しやすい設備の充実や子育て支援のためのサービスの提供などに取り組むことが主な内容である。「淡海子育て応援団」は、滋賀県健康福祉部子ども・青少年局の事業であり、「ヨコヨコ」の理念を具体化したものである。協定は、「家庭教育は、未来を担う子どもたちを育てる大切な営みであり、社会のみんなで支え合うことが重要です」という滋賀県家庭教育協力企業協定書の趣旨に賛同する企業のトップと教育長の自筆の署名で締結する。企業のトップの理解がなければ企業全体の取組にならないからである。滋賀県教育委員会は、協定締結企業に対し企業と相談しながら、1)子育てについて学ぶ機会、2)滋賀県教育委員会広報誌の配布、3)県のホームページや県教育委員会広報紙などで企業の取組を紹介する、等の支援を行っている。協定締結した時に企業名は「教育しが」に掲載される。滋賀県学習情報提供システム「におねっと」には協定企業の一社ごとの取組が紹介され、各協定企業は一言PRの掲載と企業のホームページへリンクを貼ることができる。公的機関である県のホームページで紹介されることが協定企業のイメージアップや社会貢献、従業員の職場環境や労働意欲の向上につながっている。「社会全体で子どもの育ちを支える」という理念の「見える化」を「具体化」した制度である。社会全体の子育て支援環境の向上につながっており、企業、学校、社会それぞれに相互互恵関係が見られる「三方よし」の事業となっている。
 
 
 
  参考文献
・滋賀県教育委員会生涯学習課「しがふぁみ 家庭の教育に企業の力を」『滋賀県学習情報提供システム「におねっと」』(URL:http://www.nionet.jp/)(平成25(2013)年12月23日参照)
・こころを育む総合フォーラム『こころを育む総合フォーラムからの提言』財団法人松下教育研究財団、平成19(2007)年1月31日

 
 
 
 
  



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