生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2012(平成24)年4月2日
 
 

フランスの学校外音楽指導員 (ふらんすのがっこうがいおんがくしどういん)

キーワード : 学校参与音楽家、音楽家の教育参加、フランスの音楽教育、musiciensintervenant
永島茜(ながしまあかね)
1.フランスの学校参与音楽家(Musiciens intervenant en milieu scolaire, M.I.)
  
 
 
 
   学校の音楽授業や鑑賞活動に学外の音楽家が関わることは、我が国でも行われている場合がある。更に昨今では、アウトリーチ活動やワークショップといった、より音楽家と近い関係で鑑賞できる形態も定着しつつある。フランスの教科教育としての音楽教育、つまり音楽科教育は、長らく副次的な扱いであり、授業そのものが実施されない場合もあるなどと指摘されたこともある。しかし1980年代前半の社会党政権の発足、移民の増加、学業失敗の増加、などの政治社会的背景に伴って、芸術教育による感性の涵養の必要性が唱えられ、現在では改善に向かっている。その一部を担っているのが、「Musiciens intervenant en milieu scolaire,(M.I.)」と呼ばれる学校参与音楽家である。
 学校参与音楽家は、もともと音楽家として活動していた人を、音楽科の授業で講師として活用する取り組みで、自治体や学校によって雇用されている。その養成は、大学に付設される養成センターで行われている。この点は、我が国のアウトリーチ活動やワークショップに比べて、より教育活動に関わることに対する専門性が求められていると言える。
 養成センターに入学するには、1)一般教養(バカロレア取得後2年間の学習)、2)音楽実技(国立音楽院の専門課程入学可能程度の専門器楽教育を受けていること)、3)予備登録のための書類審査(学習歴、音楽歴、アニマシオン歴や指導歴、現在の状況、等)、4)面接(書類審査の後、受験者の動機や意志から、M.I.への適正を評価する目的)が要件である。また、現職で再教育として入学する場合は、条件を満たせば月々研修費が支払われる。
 養成センターにおいて行われる内容は、最低2年間にわたり、共通必修科目:600時間(300時間の補足的な音楽教育および300時間の一般教職科目)、選択科目:400時間、教育実習:500時間を学ぶ。例えばパリ第11大学付設養成センターの例では、1)声・歌の実技実践(185時間)、2)専攻実技(160時間)、3)他の表現技術(100時間)、4)音についての知識・経験(60時間)、5)作品解釈・インヴェンション(150時間)、6)教育学・心理学(610時間)、7)実際の活動環境への知識(125時間)、8)プロジェクトの構想と実現(110時間)という内訳になっている。修了後の進路としては、多くのものが自治体や学校によって雇用されており、各養成瀬インターには求人票も送られてくる。
 
 
 
  参考文献
・永島茜『現代フランスの音楽事情』大学教育出版、2010年
 
 
 
 
  



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